ブルカが問う社会観 夜明け ともに生きる(7)

給食を楽しむ園児たち=4月21日、福岡市東区の城浜保育園
給食を楽しむ園児たち=4月21日、福岡市東区の城浜保育園
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 福岡市東区の城浜保育園に給食の時間が来た。肌の色も言葉も違う園児たちが楽しそうに同じ食卓を囲む。メニューはジャガイモのそぼろ煮、みそ汁、まぜご飯。その中に、肉でなく豆腐を使ったそぼろ煮を手にする子どもがいた。

 園児228人のうち4割が外国人。給食はイスラム教の戒律に従ったハラール食に対応する。大鍋など調理道具も二つずつそろえ、肉や調味料のエキスを混ぜないようにしている。

 「食事以外は他の保育園と同じですよ」。増本律秀園長(50)が笑顔を見せる。クリスマス会で歌を歌わず、七五三の遠足で神社に行かない子もいるが、それはそれ。押しつけず、寛大に受け止めている。

 各地で進む異なる宗教や習慣への配慮。だが多文化共生の夜明けを迎えたばかりの私たちはまだ、あるべき社会の姿を鋭く問われる経験をしていない。

   ◇   ◇

 イスラム教の女性が全身を覆う衣装「ブルカ」。フランスは2011年、ブルカなどの着用を公共の場で禁止する法律を施行した。高まる反イスラム感情を背景に、当時のサルコジ政権が反対論を押し切った。

 治安上、人の識別を妨害する服装は問題だというのが主な理由だが、福岡市在住のフランス人留学生ミラ・タヒナさん(22)は首をかしげる。

 パリでブルカ姿を見たことがなく、多くのイスラム教徒の友人も気さくな人ばかり。「何も法律で禁止しなくてもいいのに」。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルも「個人の選択の自由を認めるべきだ」との立場だ。

 ところが欧州人権裁判所は14年、着用禁止は思想、良心、信教の自由の侵害に当たらないと判断した。どういうことか。

   ◇   ◇

 法律はブルカだけでなく、オートバイのヘルメットなどを含む「顔を覆う全ての手段」を禁じている。

 互いの顔が見える社会は「他者との共生」の大前提。顔を隠すのは社会への帰属を拒む行為だ-。欧州人権裁は、こうした理念に基づく着用禁止を「正当化できる」と結論付けた。

 外国人を支援する「多文化共生ネット・九州」コーディネーターの高柳香代さん(49)はフランス留学の経験がある。「ブルカについて意見が割れるのはよく分かる」という高柳さんだが、イスラム教徒をひとまとめに危険視する風潮が強まっていることは、やはり気にかかるという。

 では私たちはどうすればいいのだろう。コンビニや銀行は防犯を理由に、目出し帽やフルフェースのヘルメットを断っている。ならばブルカ姿の入店も断るのか。学校、役所、企業、レストランは…。

 まだ扉の向こうにいる隣人たちが「日本はどんな社会を目指すのですか」と問うている。

 =おわり


=2017/05/05付 西日本新聞朝刊=

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