政府「放置」に終止符を 連載を終えて

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 労働移民ではなく外国人材。人口減社会の前線で外国人との共生が進む中、政府は巧みな言い換えで正面からの議論を避けてきた。

 「いわゆる移民政策はとらない」と安倍晋三首相は繰り返す。実際は、国際的な定義で1年以上滞在する「移民」の外国人労働者を積極的に呼び寄せてきた。

 在留外国人は2008年のリーマン・ショックから減少したが、13年以降はアベノミクスを下支えする存在として増加に転じ、昨年末には238万人と過去最多を記録。経済協力開発機構(OECD)の統計で世界5位の流入国となった。

 昨年5月、自民党の労働力確保に関する特命委員会が「単純労働者」の受け入れ解禁を提言した。委員長の木村義雄元厚生労働副大臣は、従来の国策を「表向きは鎖国だが、裏木戸からそっと入れて人手不足を補う。カラスは白いという政策だ」と指摘する。

 政府関係者によると、昨年7月の参院選で争点化を避けたい官邸中枢の指示で、提言を受けた議論は選挙後に先送りされた。右派が移民に消極的なためだ。さらに欧州でテロが発生し「議論は凍結されたまま」(与党議員)となった。

 欧州でも戦後、出稼ぎ者を受け入れた国で排斥運動が社会問題化した。「労働力を呼び寄せたつもりが、やって来たのは人間だった」(劇作家マックス・フリッシュ)。このうちドイツは、国民的議論を経て1990年代後半から政策を転換。公費によるドイツ語学習や法律、文化講習など社会統合策を推進している。

 留学生や技能実習生の名の下に安価な労働力を受け入れ、社会保障や教育のコストを生まないよう数年で帰国させる-。そんな日本の対応を、欧米の移民排斥主義者は「理想的」と評する。一方、日本語教育など生活者支援を放置する「移民ネグレクト」には人権的な視点から批判もある。

 各国で経済発展が進めば人材争奪戦は世界規模に広がる。近未来には「外国人を受け入れるか」ではなく「日本に来てくれるか」が焦点になるだろう。移民ネグレクトに終止符を打ち、政府が具体策を掲げて国民に問う時が来ている。

 ◆6月17日に福岡市で公開シンポジウム

 西日本新聞社は、定住外国人との共生の道筋を探るキャンペーン報道「新 移民時代」の公開シンポジウムを6月17日午後1時半~4時、福岡市早良区西新2丁目の九州大西新プラザで開く。人口減社会で持続的発展を探る一般財団法人「未来を創る財団」(会長・国松孝次元警察庁長官)との共催で、入場無料。

 「フクオカ円卓会議」と題し、九州で外国人労働者が最も多い福岡県で暮らす外国人や支援者、企業経営者、行政関係者、日本語教育関係者、研究者らが一つのテーブルを囲む。

 定住外国人の受け入れ方針の明示や、官民で政策課題を議論する委員会の設置を政府に提言してきた国松会長が基調講演。本紙取材班が報道で浮き彫りになった課題を報告し「労働者としての外国人」「生活者としての外国人」をテーマに人口減時代の日本で共に生き、暮らす方策を考える。一般席は定員200人で申し込み不要。問い合わせは「新 移民時代」取材班にメール(imin@nishinippon-np.jp)で。

=2017/06/06付 西日本新聞朝刊=

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