移民 年10万人受容を 作家・堺屋太一氏 明日への提言(1)

堺屋太一氏
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 事実上の移民が人口減少時代の日本社会を支えている現実と、移民政策を論じようとせず建前と本音を使い分けてきた国策。そのひずみをアジア諸国との最前線、九州で見つめ、定住外国人との共生の道筋を探るキャンペーン報道「新 移民時代」を西日本新聞は昨年12月から展開してきた。

 日本で満足な勉強や進学、就職が果たせず、「出稼ぎ留学生」や「偽装難民」と化す途上国の若者たち。彼らを食いものにする「名ばかり学校」。安価な労働力として人手不足の穴埋めに使われている技能実習生。人材争奪戦が過熱する各国の実情。外国人参入で変わる仕事場。生活者として地域で受け入れるための課題…。移民問題を直視することは日本社会のあり方を考えることにつながる。

 キャンペーンを締めくくる第9部は、日本型移民政策の具体的な提言を各分野の専門家に聞く。

   ◇   ◇

 人口減少問題は国家存続の危機であり、「焦眉の急の重大事」だ。最低でも年10万人の外国人を受け入れて「次世代日本人」を養成することが必要だ。

 1976年に未来予測小説「団塊の世代」を発表した。47~49年生まれの団塊世代は極めて多く、彼らの高齢化が終身雇用制度を持つ企業の負担となり、やがては社会保障費増で国の財政問題につながると予想した。

 しかし、当時の官僚や人口問題の専門家は「団塊世代の子、孫の世代と30年ごとに人口が増える」と耳を貸さなかった。当時、政府では人口増を前提に土地が足りなくなるとして可住地を増やすことに熱中した。

 現代はどうなったか。団塊の世代の孫世代は出生率が低く、少子高齢化が進んだ。労働力減少で企業は人手不足に陥り、耕作放棄地や空き家の増加が問題となっている。今後さらに高齢化や過疎化は進むだろう。

 外国人に日本語や法律、習慣を学んでもらい、試験も経て永住してもらうしかない。一番良い例は「相撲部屋」だ。外国人力士は日本語が上達し、犯罪も少ない。相撲を通じて永住する意欲がある。企業も同じように、外国人だけの集団をつくらず、日本人の中で生活習慣を身に付けてもらうことはできるはずだ。

 現在の技能実習制度は3~5年で母国に追い返す。これでは外国人が日本社会に溶け込もうという気にならない。外国人による不動産や農地取得を緩和し、一定の語学力や資産を持つ人には永住権を与えてはどうだろうか。

 経済成長を目指さず「身の丈に合った国」でいい、という意見も聞くが、人口減や経済停滞が「ほどほどの水準」で止まる根拠はなく、加速度的に縮小する恐れがある。

 日本はドイツのような移民受け入れになじまない、という論調もある。ただ、歴史をみれば17世紀や19世紀に日本は中国や朝鮮から大量の移民を受け入れた。忠臣蔵で吉良邸に討ち入りした武林唯七(たけばやしただしち)の祖父は中国出身だ。工芸分野のほか、各藩の医師や書記となった者もいた。

 海外出身者が「次世代日本人」になった将来の日本では、明治維新後の「大正ロマン」のように美意識の多様化が起きると想像する。日本初の喫茶店を開いたのは中国人だし、神戸でハイカラ文化を生み出したのも中国人だった。

 アジア諸国では今後10年で高齢化が進み、日本を含めた人材の争奪戦になる可能性がある。残された時間は少なく、政治主導で「次世代日本人政策」を進めるべきだ。

 ◆堺屋太一氏(さかいや・たいち) 作家・経済評論家。元経済企画庁長官。2026年の日本を予測した「団塊の後 三度目の日本」(毎日新聞出版)を4月に出版した。

=2017/06/07付 西日本新聞朝刊=

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