国内雇用に悪影響も 連合副事務局長・安永貴夫氏 明日への提言(5)

安永貴夫氏
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 外国人労働者の受け入れ政策は目まぐるしく変化している。政府はこれまで、原則として高度で専門的な分野に限定して外国人労働者の就労を認めてきた。しかし最近は、東京五輪に向けた建設・造船分野での受け入れなど、もっぱら受け入れ拡大の政策が展開されている。

 外国人労働者を安易に受け入れれば、国内雇用や労働条件に悪影響を及ぼしかねない。彼らが低賃金で劣悪な労働環境で働くと、労働条件の改善にブレーキがかかってしまう。経済界には東京五輪に向け建設現場の人手が足りない、という声があるが、下請けの経営者たちは「外国人労働者の受け入れを前提に安く発注されてしまい、労働条件が改善されない」と嘆いている。

 政府は「女性が輝く社会」をうたい、女性の社会進出や雇用促進を後押ししているはずだ。女性だけでなく高齢者、若者など、働きたい人が希望する仕事に就き、満足する収入を得れば、消費は拡大し、経済の好循環につながるだろう。

 外国人労働者はそうした人の活躍の場を奪いかねない。外国人は、日本で稼いだ金を本国に送金する人が多く、日本経済の好循環にもつながらない。

 政府は、外国人による家事代行サービスを神奈川県や大阪市などの国家戦略特区で解禁した。特区を活用し、農業分野で外国人労働者を受け入れることも決めた。受け入れ拡大は「地域限定」「業務限定」の形なので、国民はすぐに「自分の職が奪われる」とは考えない。広く国民の関心が向かないまま、なし崩し的に拡大の既成事実がつくられている。拡大するなら、国民的な議論が必要だ。

 外国人を排斥しようというのではない。受け入れるなら、日本人と同等の賃金、労働時間などを保障しなければならない。

 外国人は「労働力」ではなく、「生活者」であり「市民」だ。出稼ぎのつもりで来日したのに、結婚して定住する外国人も多い。彼らを働かせたいときだけ働かせ、必要がなくなれば本国へ追い返す、というのは通用しない。教育や社会保障など、社会インフラを利用する権利も保障しないといけない。

 それには多大なコストがかかる。受け入れ拡大を主張している人たちは、そのコストを負担しようという覚悟があるのか。労働人口の減少を見据え、日本の労働の在り方について幅広い議論が求められている。

 ◆安永貴夫氏(やすなが・たかお) 連合副事務局長。主に雇用・労働分野を担当する。内閣府仕事と生活の調和連携推進・評価部会委員。

=2017/06/13付 西日本新聞朝刊=

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