「実習」名目の就労、限界 外国人受け入れ拡大へ 労災や未払い、人権上配慮が課題に

ベトナム政府公認の送り出し機関で、日本語教育を受ける技能実習生の候補者たち=ホーチミン
ベトナム政府公認の送り出し機関で、日本語教育を受ける技能実習生の候補者たち=ホーチミン
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 政府が新たな在留資格を設け、外国人就労の拡大に大きくかじを切るのは、留学生や技能実習生が技術の習得を名目としながら、実際は人手不足の業界を支える重要な労働力となっている現状に「限界」が生じているからだ。外国人を「労働者」として正面から受け入れることで、慢性的な人材不足を補う効果が期待されるが、事業者側が「安価な労働力」として活用する懸念は残り、人権上の配慮も重要な課題となる。

 総務省によると、2017年10月現在の日本の生産年齢人口(15~64歳)は約7596万人だが、30年には約6773万人に減少。一方、厚生労働省の調査では、17年10月現在の外国人労働者数は約128万人で、3年間で50万人増加した。このうち技能実習生と留学生のアルバイトが約55万人を占め、前年比23%増。労働力として欠かせない存在となっている。

 ただ、技能実習は最長5年間。政府は、就労を目的とした新たな資格「特定技能」を創設することで、長期的な労働力として確保したい狙いだ。

 介護は昨年11月から技能実習の対象に加わり、外国人を受け入れてきた。厚労省などの試算では、25年の介護人材の需要見込みは約245万人で、約55万人の不足が生じる。これから年間約6万人の人材を確保する必要があるが、地方では新卒採用が少ない上、離職者が多いのが現状。事業者への調査では、外国人の受け入れ拡大を求める意見が多く寄せられたという。

 政府の試算では、介護分野は年間1万人の外国人労働者の受け入れを目指しており、来年度から介護施設での日本語教育の支援を検討している。

 高齢化が進む農業の担い手不足も深刻だ。17年の外国人労働者数は技能実習生を中心に約2万7千人だが、試算では23年には最大で10万3千人程度が必要になると見込む。

 政府は今年3月、愛知県など3カ所を外国人の就農を認める国家戦略特区に認定。政府筋は「特区に限らず、全国で外国人の就農者を受け入れないと、日本の農業は持たない」とみる。

 新制度では、農業法人などが外国人と契約し、年間を通じて幅広い農作業ができるようにするほか、派遣会社から収穫期に合わせて外国人を全国に派遣できる形態を想定している。関係者は「非常に使いやすい制度になる」と歓迎する。

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 「宿泊業」を新たに技能実習の対象に加えるのは、増加する訪日客に対応するのが目的だ。17年の訪日外国人は約2869万人。現在は全国のホテルや旅館で約3万8千人の外国人労働者が働き、そのうち7割が留学生のアルバイトだ。ほとんどが室内掃除など「裏方」を担っている。

 政府は30年の訪日客目標を6千万人に設定。観光庁は、それまでに現在の2倍超になる約8万5千人の外国人スタッフが必要になると見込み、都市部に集中する留学生だけでは不足するとみている。

 技能実習生は、外国語の専門性を生かし、主にホテルのフロントやレストラン接客などを担うことで調整している。

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 技能実習を巡っては、労災事故や残業代未払いなどが相次ぎ、社会問題となっている側面もある。政府は監督機関や罰則を設け、管理を厳しくしてきたが、新制度により、事業者が外国人労働者を直接受け入れる形が進めば、そうした問題が表面化しづらくなる恐れもある。

 日本に先駆けて、外国人を労働者として受け入れる韓国には、政府による支援センターが約40カ所ある。日本政府関係者は「日本がアジアの若者から注目されるのは20年の東京五輪まで」との危機感を抱く。海外との人材獲得競争の激化が予想される中、日本も外国人のための労働、生活相談体制を整えることが課題になる。

=2018/05/20付 西日本新聞朝刊=

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