「移民」否定の“建前”維持 政権支持の保守層に配慮 外国人労働者受け入れ拡大

 政府は15日、経済財政運営の指針「骨太方針」を閣議決定した。新たな財政健全化計画では、基礎的財政収支の黒字化目標を従来より5年遅い2025年度に先送り。19年10月に消費税率を10%に引き上げる必要性を明記し、増税による景気悪化を防ぐ対策を講じるとした。少子高齢化を最大の課題と位置付け、人手不足を補う外国人材の受け入れ拡大を盛り込んだ。

 政府は15日、骨太方針に新たな在留資格の創設を盛り込み、これまでタブー視されてきた外国人労働者の受け入れ拡大にかじを切った。人手不足の深刻化を受け、ようやく政策を転換させた形だ。安倍政権を支持する保守層に配慮し、「移民政策は取らない」との建前を維持しているものの、実態としては、多数の外国人が長期間、国内に滞在することが可能になるため、教育や福祉面などの受け入れ環境整備が求められる。

 菅義偉官房長官は記者会見で「即戦力となる外国人材を幅広く受け入れる仕組みを構築する必要がある」と語り、早期の関連法案提出を目指す考えを示した。

 全都道府県で有効求人倍率が1倍を超えるなど、人手不足は急速に進行。にもかかわらず、政府が外国人受け入れに及び腰だったのは、「保守層の支持を受ける首相が、外国人受け入れをやりたくないだろうという忖度(そんたく)があった」(官邸関係者)からだという。

 転機は首相と側近との会話だったという。側近が「外国人受け入れを進めるべきでは」と探りを入れると、首相から「やった方がいいね」と意外な答えが返ってきた。これを機に、昨年暮れごろから政府内で検討を開始。今年2月の経済財政諮問会議で、首相は「外国人受け入れについて、早急に検討を進める必要がある」と明言した。

 一方で、自民党の保守系議員は「なし崩し的に外国人が入ってくる仕組みは認められない」と強調。こうした声にも配慮し、新たな制度では、在留期間を最長5年に限定し、家族の帯同も認めない仕組みにした。

 しかし、現行の技能実習と合わせれば計10年は国内で働けるようになる上、高度な専門性を身に付ければ長期滞在や家族の帯同も可能とする制度も検討。自民の会合では「移民政策と何が違うのか」との意見も出た。政府は「移民にはいろんな定義がある」と明確な立場を示さず、「移民政策を取る考えはない」と主張し続けている。

 移民政策とは、海外からの移住者と共生していくための政策だ。政府が安価な労働力としてだけ捉えて受け入れれば、外国人の孤立や社会の分断にもつながりかねない。いかに生活者としての外国人に向き合うかが問われている。

=2018/06/16付 西日本新聞朝刊=

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