外国人就労「詳細は省令」 来年4月施行を最優先 入管法改正案閣議決定

 政府は2日閣議決定した入管難民法改正案に新たな在留資格の創設を盛り込んだが、制度設計の詳細は成立後に定める法務省令などに先送りした。来年4月施行を急ぐ「見切り発車」の背景には、人手不足にあえぐ産業界の要請に応え、来年夏の参院選で実績をアピールしたい思惑がある。だが十分な国会審議もないまま政府が制度運用の自由裁量を握れば、外国人労働者が安易な雇用の調整弁になりかねない。

 「人手不足が成長を阻害する大きな要因になり始めている。しっかり制度をつくる」。安倍晋三首相は2日の衆院予算委員会でこう強調した。「来年4月に間に合わせるため、骨格で通してほしい」(政府高官)というのが本音で、法案は首相が本会議の質疑に応じる必要が出てくる「重要広範議案」にもなっていない。

 急ぐ要因には産業界の突き上げもある。経団連は2016年と今年10月の2回、企業ニーズを前提に外国人労働者の受け入れ促進を提言。中西宏明会長は10月24日の記者会見で「経団連の意見を相当反映した方向で決めてもらっている」と改正案の成立に期待を込めた。

 政治的な思惑も見え隠れする。来年は統一地方選と参院選が重なる12年に1度の「選挙イヤー」。地方の中小企業や農林水産業などでは人手不足を訴える声が強く、手を打たないと影響が出かねないからだ。九州選出の自民党参院議員は「地元に帰ると、早くどうにかしてくれと言われる。この状態が続けば選挙を戦えない」と訴える。

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 今回、新たに創設する在留資格をどの分野に適用するかなど、制度の詳細は省令に委ねられる。受け入れの条件となる人手不足を判定する基準、在留資格に必要な技能を測る手法なども明らかになっていない。

 省令は与党との協議は必要になるものの、国会の議決は必要ない。国会のチェックが働かないため、政府は制度運用のフリーハンドを握りやすい。

 改正案によると、政府は人手不足が解消された場合は受け入れを停止するとしており、雇用情勢によって受け入れ数を広げたり狭めたりしやすい制度設計が想定される。山下貴司法相は1日の衆院予算委員会で、受け入れる外国人労働者数について「数値として上限を設けることは考えていない」と述べている。

 だが透明性を確保しなければ、日本人労働者の賃金低下や治安悪化など世論の反発で受け入れ基準を「開け閉め」する運用になりかねない。野党からは「景気が悪化すれば本国に帰ってもらうような受け入れ方は問題だ」との声が上がる。

 法案が成立、施行されればこれまで以上に多くの外国人が日本で生活するようになる。自民党重鎮の伊吹文明元衆院議長は「日本の国柄を変えるだけの決意を持たないといけない。いいとこ取りはできない」と話す。

=2018/11/03付 西日本新聞朝刊=

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