週72時間で月給7万円も…失踪実習生の聴取票開示 法務省

 外国人材の受け入れを拡大する入管難民法改正案を巡り、法務省は19日、失踪した外国人技能実習生を対象にした2017年の聞き取り調査の聴取票2870人分を衆院法務委員会の与野党の理事らに開示した。一部を閲覧した野党議員は、多額の借金を背負って来日し、入国前の説明より低い最低賃金以下で働かされるなど法令違反のケースが散見されるとして、実態解明を進めるため、閲覧でなく写しの提供を求めた。

 母国の送り出し機関への支払額は230万円。入国前は10万円と説明された実際の月額給与は8万円。このベトナム人男性(溶接)は入国後、2年3カ月で失踪した。

 週100時間働かされたインドネシア人男性(畜産農業)、週72時間労働で月給7万円だったフィリピン人男性(建設)-。聴取票を書き写した野党議員が報道陣に公開した文書からは、長時間労働や低賃金で酷使される技能実習生の労働実態が浮かぶ。

 立憲民主党の山尾志桜里筆頭理事によると、自身が書き写した20人分のうち、最低賃金以下の疑いがあるのは17人に上ったが、失踪動機を選ぶ項目で「低賃金(最低賃金以下)」の選択はゼロだった。

 山尾氏は聞き取った入国管理局の担当者が最低賃金以下を認識しながら、チェックしなかった疑いがあると指摘。「違法労働を見逃してきたことを表沙汰にしたくないから、閲覧しかさせないのではないか」と批判した。国民民主党の山井和則国対委員長代行も「労働は過労死ラインを超え、給料は最低賃金割れ。これは失踪ではなく、緊急避難だ」と訴えた。

 安倍晋三首相は19日の自民党役員会で、聞き取り調査で誤りが判明したことについて「大変遺憾だ。気を引き締め、丁寧な説明を行う」と述べた。

 衆院議院運営委員会は19日の理事会で、立民が提出した法務委の葉梨康弘委員長(自民)の解任決議案を20日の本会議で採決すると決めた。与党は否決し、21日の法務委で実質審議入りさせる方針だ。

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 「入管法の審議拙速」経済同友会も苦言

 経済同友会の小林喜光代表幹事は19日、東京都内であった連合との懇談会で、外国人労働者の受け入れ拡大を目指す入管難民法改正案の国会審議について「ちょっと拙速じゃないか」と慎重な見方を示した。人手不足解消を望む経済団体だが、小林氏は「人手不足は間違いないが、なし崩し的にいくことに大いなる心配がある。質を高めて議論してほしい」と注文した。

 小林氏は記者団の取材に「モデルケースのような形でスタートして、詳細設計は知恵を出せばいい」と法案成立に期待をみせる一方、社会保障や日本語教育など全体的な施策を国民に納得してもらう必要があるとし「そう簡単な問題ではない」とも述べた。

 懇談会で同友会側は、企業側にも受け入れコストを負担する覚悟が必要だとの認識を示し「内容が詰まっていない中で法律を通してしまうやり方はどうか」「民間に丸投げでなくて国が主体的に関与する仕組みが必要」と主張した。

 連合の神津里季生(こうづりきお)会長は懇談会で「20年後30年後の社会や経済のあり方について議論が不足している」と指摘。記者団の取材に「(外国人の労働環境や人権など)いろんな問題を置き去りにして枠組みだけを先につくるのは禍根を残す」と苦言を呈した。

=2018/11/20付 西日本新聞朝刊=

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