福岡市のネパール人、世代超えて団体 異国の夢 同胞が支え 孤立防ぎ、母国文化継承も

おでこに赤い「ティカ」を付け、民族の暦で新年を祝うネパール人=11月8日夜、福岡市中央区
おでこに赤い「ティカ」を付け、民族の暦で新年を祝うネパール人=11月8日夜、福岡市中央区
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 遠い異国で暮らす外国人にとって文化や慣習、宗教観を共有する同胞は心強い存在だ。外国人労働者の受け入れを巡る国会論戦が続く中、約4千人のネパール人の留学生や定住者が集まる福岡市では、世代を超えた同胞団体が来日したばかりの若者の孤立を防ぎ、心を支えている。一方、日本の便利な生活に慣れていく後輩に「祖国を忘れないで」と諭す役割も。いつか帰国する日のため、母国の伝統や文化を次世代に継承する場ともなっている。

 11月初旬の夜。福岡市中央区のビル一室がネパール人で埋まった。この日はネパールの首都カトマンズ周辺に多い「ネワール族」の暦で新年に当たる。民族の晴れの衣装に身を包んだ女性たちが踊りを披露し、参加者のおでこには「ティカ」(赤い粉を混ぜた米)。祝祭ムードに包まれた。

 集まったのは、日本語が片言の新人留学生から、就職や店舗経営で来日歴が長いベテランまでさまざま。苦学してでも職を得て貯蓄し帰国すれば一財産を築ける日本留学。学費を工面できれば中流層でも手が届く「夢」を求め、若者が押し寄せる。

 「同胞が増えるのはうれしいけれど…」。福岡ネパール・ソサエティーの元代表ラム・クリシュナさん(35)は不安を口にする。「誰かが犯罪や問題を起こせばネパール人全体のイメージが悪くなる。それが怖い」。留学を経て日本企業に就職を果たしたラムさんは、若者たちの良き理解者。年長者を尊ぶ国民性を生かし、後輩の風紀の乱れに目を光らせる。

 政府が創設を目指す新たな在留資格「特定技能」は、学費なしで中長期に滞在し、出稼ぎができるとあって人気が集まる可能性もある。だが、ここは英語すら通じない国。日本語をしっかりマスターせずに長期滞在するとなると不便が伴う。逆に、日本で生まれたり、若いうちから日本生活が長引いたりすると、母国の文化に触れないまま成長することにもなる。

 料理店で働くカドギ・ニトゥさん(34)は、母として長女ニジカさん(8)と次女ニコリちゃん(2)の今後を思いやる。福岡育ちのニジカさんの日本語は完璧。でも、ネパール語は「少しだけ」。後には、これから言葉を覚えていくニコリちゃんも控える。

 「民族のアイデンティティーを失ってはいけない」。アジア日本語学院(福岡市)のネパール人職員ダルマ・ラージュ・アディカリさんは危ぶむ。「死ぬ時は祖国で」というのが多くのネパール人の思い。ダルマさんは「いつか帰る日のために、祭りを通して次世代に母国の伝統文化を継承しなければ」と力を入れる。

 「子育てのため、来年帰国する」。カドギさんは悩んだ末、そう決意した。外国人労働者の受け入れ拡大で、日本の未来はどう変化していくのか。日本語の「虹」と「にっこり」にちなんで名付けた娘たちが、いつか再び目指したくなるような真の共生社会が実現しているのだろうか。

=2018/12/01付 西日本新聞朝刊=

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