「日本は稼げる?」タイ国内で温度差 首都-「割に合わず」人気低調 地方-人材育成、還元に期待

日本の外食産業への就職を目指し、「頑張ります」と誓う2人とテムラック・チャオ会長(右)
日本の外食産業への就職を目指し、「頑張ります」と誓う2人とテムラック・チャオ会長(右)
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 改正入管難民法が施行される4月、アジアからの外国人労働者受け入れが始まる。日本との賃金格差が大きい途上国では「稼げる」と注目を集める新制度だが、そのメリットは各国の経済成長の度合いによって異なる。中進国のタイでは首都バンコクに静観ムードが漂う一方、地方では新たな人材供給の仕組みづくりが進みつつあった。

 「日本に人材を送れないか」。バンコクの人材紹介会社「パーソネル・コンサルタント」には、昨秋から日本企業の問い合わせが増えた。目立つのは介護業界。だが、小田原靖社長(50)=福岡市出身=の答えは毎回同じだ。「ホワイトカラー(事務職や研究職)の高度人材は紹介できるが、ブルーカラー(労働者)は送れない」

 バンコクの労働者の月収は2万~2万5千バーツ(7万~9万円)。日本で働けば月収は2~3倍に増えるが、小田原さんは「温暖な国で、それなりに幸せに働いている。難しい日本語を学んだ上、待っているのはきつい仕事。3倍でも割に合わない」とみる。

 タイ人向けの日本語教育機関「ジェイエデュケーション」の長谷川卓生代表も「3K職場に人材は送らない」と消極的。「技能実習の後継制度であるとすれば、慎重にならざるを得ない」と考えるからだ。米国務省の人身取引報告書で2016年まで「強制労働」と指摘され、改善を迫られてきた日本の技能実習制度に海外の視線は厳しい。

 ミャンマーやカンボジアなどから出稼ぎ労働者を受け入れるほど人手不足状態のバンコクで、日本への「出稼ぎ」人気は低調だ。

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 だが、地方は事情が異なる。首都から南に約580キロ離れた都市ナコンシータマラート。日本留学や日系企業の橋渡し役として00年に設立された「タイ日人材育成協会」の動きが慌ただしい。

 協会では、外食産業への就職を希望する男性2人が日本語を学んでいた。1年間の日本留学を経て、特定技能ビザに挑戦する計画だ。ただし2人は貧しく、受講料は払えない。そこで同協会は「住み込み方式」を導入した。

 2人は午前5時に起きて敷地を清掃。協会のテムラック・チャオ会長が手掛ける養殖魚の世話や農地管理も手伝う。この労働力と引き換えに部屋代や食事代、教育費用はすべて無料で提供する。日本への留学費用は渡航後、提携するホテルやレストランでアルバイトして返済する仕組みだ。

 同協会の真の狙いは介護業界。タイ国内の看護系大学に働き掛けを強め、年間100~150人の送り出しを見込む。「住み込み」用の女子寮も完成済みだ。

 チャオ会長の念頭には、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で、シンガポールに次ぐスピードで進む少子高齢化がある。「日本の役に立ち、帰国後は未来のタイの高齢社会を支える貴重な人材となってくれるはずだ」と意気込んでいる。

=2019/03/19付 西日本新聞朝刊=

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