今天中国~中国のいま(47) 自立心が旺盛な理由

天安門広場を歩く中国人民解放軍の幹部ら(共同)
天安門広場を歩く中国人民解放軍の幹部ら(共同)
写真を見る

 北京名物、羊肉のしゃぶしゃぶが有名な北京の老舗料理店が今、閉店の危機に立たされている。

 関係者によると、入居するビルの所有者が突然、即時立ち退きを要求してきたという。ビル内には従業員たち100人以上が住む寮もある。地方からの出稼ぎ者は路頭に迷うことになる。

 ずいぶん急な話だが、ビルの所有者の正体を聞いて納得した。人民解放軍である。ただし、軍は横暴だから、というわけではない。

 内戦に勝利し共産党政権誕生の原動力となった軍は1980年代以降、保有資産を活用してビジネスをするようになった。90年代に禁じられたが、軍の金もうけは続いた。習近平国家主席は2015年に発表した軍改革の一環として、腐敗を生みかねない軍のビジネス禁止を改めて命じた。

 料理店から賃料を取るのも商売だ。重要な政治イベントである共産党大会を秋に控え、禁止徹底の大号令がかかっても不思議はない。軍改革の余波が、料理店に波及したわけだ。

 利権構造に切り込むのは結構だが、振り回されるのは庶民。中国に借り主の権利保護という概念はない。「人を人と思っていない。自分たちの都合だけだ」と知人の経営者は嘆く。

 中国の人々が自分の生活に直接関係ない限り、表面上は政治に関心を示さない理由が分かる。手の届かないところで物事が動いており、気にしても「仕方ない」からだ。だからこそ「お上」に頼る意識が薄く、自立心旺盛なのだろう。

 共産党と関係が良好とされる著名な起業家は、こう漏らしているという。「とにかく、政府は私の邪魔をしなければいい」 (北京・相本康一)

 =随時掲載

 2017/07/17付 西日本新聞朝刊

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]