キノコ、おいしく健康増進 洗わない ちょい干し 保存は冷凍
秋の食卓を彩るキノコは健康面でも注目される食材。さまざまな種類が気軽に手に入るので、日々の料理にも十分生かしたい。西日本有数の産地、福岡県大木町で、特産のキノコを生かした総菜を提供するデリ&ビュッフェ「くるるん」を訪ねた。
サラダ、パスタ、天ぷら、みそ汁、炊き込みご飯…。店内にずらりと並ぶ品々の一押しはやはりキノコを使ったメニューだった。
たれを絡めたサイコロ状の総菜が目についた。一口いただくと、小気味よい食感、うま味がじわっと口の中に広がる。「ころころエリンギ」。季節の限定料理だったが、客からのリクエストが多く、今や人気の定番メニューとなっている。
「キノコは繊維方向に裂いたり切ったりすることが多いけれど、これは、ぶつぶつと短く切っています」。店の代表を務める松藤富士子さん(57)が独特の食感の理由を教えてくれた。
筑後平野に位置する大木町は「博多えのき」「博多ぶなしめじ」などのブランドきのこをはじめ、福岡でしか生産されない「ぬめりすぎたけ」、免疫力を高めるとされるベータグルカンが豊富な雪嶺茸(ゆきれいたけ)など、種類の多さと品質の良さが自慢の産地だ。
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食材としてのキノコを熟知する松藤さんに調理の注意点を聞いた。
「まず大事なことは水洗いしないこと」
吸水性が高いので、洗うと水っぽくなり、うま味も栄養も逃げてしまうからだ。「今はほとんどが栽培施設内で衛生的に生産、出荷されているので洗わなくても大丈夫」と付け加えた。
根元の硬い部分「石突き」の処理も間違いやすいポイントだ。
「必要以上に落とさないことが大事。エノキタケなど半分ぐらい切り落とす人もいるけれど、根っこほどうま味と甘味がある」
石突きは1センチを目安にできるだけ短く切り取り、残ったくずはペーパータオルなどでたたいて落とす。
食感を生かすメニューとして薦めてくれたのが「えのきステーキ」。1株の根っこ部分を厚さ2センチほどの輪切りにし、バター焼きして塩コショウしたシンプルな料理だ。
「ちょい干し」もおいしさアップのひと工夫。3、4時間天日干しをすると、うま味が濃縮され、味も香りも良くなる。
さらに保存は、料理に使える状態に下ごしらえした後、袋に入れて冷凍する。冷凍の過程で細胞壁が壊されるため、調理するときに味がよく染み、栄養分も吸収されやすくなるという。自然解凍するとうま味や栄養が流れ出てしまうので、くれぐれも解凍せずに料理に使うこと。
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「低カロリーでビタミン、ミネラルが豊富。だから現代人の抱える病気を予防する効果が期待できる」
キノコを積極的に食事に取り入れ、高血圧、動脈硬化の症状を改善した例を身近に何人も見てきたという松藤さんは、そう信じている。
「食物繊維の多さはダイエットにぴったり」と言うのはエノキタケの生産者、大塚敏秋さん(52)。みそ汁や炒め物など毎日簡単な料理で食べるのが長続きの秘けつという。シメジを中心に雪嶺茸などを生産する農事組合法人「きのこの里」理事の北島良信さん(59)は肝機能の回復を助けるとされるオルニチンの多さをPRする。「今はシジミよりシメジです」
▼ころころエリンギ
【材料】エリンギ200グラム/すりごま大さじ2/片栗粉適量/揚げ油適宜▽たれ しょうゆ15ミリリットル/みりん20ミリリットル/砂糖大さじ2
【作り方】(1)エリンギを2センチ角に切る(2)(1)をさっと水にくぐらせ、片栗粉をまぶす(3)180度の油でカリッとなるまで揚げる(約2分)(4)たれをまぶし、すりごまをかける。
=2016/11/09付 西日本新聞朝刊=