「生ごみに価値」 広がる共感 リサイクル、経営と両立に挑む 久留米の飲食業 白仁田裕二さん

生ごみを入れて3週間。シート下の土の表面に広がる菌を見る白仁田さん
生ごみを入れて3週間。シート下の土の表面に広がる菌を見る白仁田さん
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自社農園ではダイコンや豆類など季節に合わせて栽培する
自社農園ではダイコンや豆類など季節に合わせて栽培する
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 「今となっては笑い話ですが-」。そう切り出した福岡県久留米市の「おなか元気ぐるーぷ」代表、白仁田(しらにた)裕二さん(57)は10年ほど前、生ごみリサイクルを始めた頃のことを振り返る。

 経営する飲食店の生ごみを畑に入れて堆肥化し、自社農園を始めた。すると、ごみの不法投棄を疑うメディアから市役所に確認の取材が入ったという。「なぜ畑にごみを捨てるのか、と不審に思った農家が情報提供したんでしょう」

 農園は市内、北野町の筑後川沿い。秋には見物客でにぎわうコスモス街道に近い。耕作放棄地5カ所、計約6千平方メートルを借り受け、年間約50種の野菜を生産、店で使う2~4割を賄う。

 「これが生ごみを食べて増殖した菌です」。白仁田さんが畑にかぶせたシートをはぎ、指さした。土の表面が網状に白く覆われている。生ごみを入れて3週間、有用菌が成長した証しだ。

 化学肥料は使わず無農薬で、菌を生かした「元気野菜」を旬に合わせて栽培する。収穫後は畑を寝かせ、生ごみでの土づくりを経て、3カ月後に再び作付けというサイクルを守る。

    ◇   ◇

 生ごみリサイクルを始めたきっかけは市のごみ最終処分場問題にさかのぼる。周辺が水源地であることを理由に建設に反対する市民と行政が長年対立。白仁田さんもごみ問題に関心を持つようになったが、飲食店など7カ所を運営し、日々大量の生ごみを出す自身の立ち位置との矛盾が、心にしこりを残した。

 2005年、生ごみ問題を取り上げた本紙の連載「食卓の向こう側」を目にする。「ごみをプラスに転換したい」との思いが膨らみ、記事に登場した有機農家の吉田俊道さん(58)に学ぶため長崎県佐世保市の農園を訪問。命ある土が生み出す滋養あふれる元気野菜に感動し週1回、半年間通い詰めた。

 いざ始めると、次々に問題に直面した。生ごみはイノシシを呼び寄せた。苦情が来ないよう乾燥させて入れるようにした。農薬に頼らない分、人の手が要る。人件費は「想定の2倍以上」で厳しい経営が続いた。

 転機は13年。野菜やいりこなどを粉末にしたミネラルいっぱいのふりかけの加工を始めた。比較的容易な作業に、障害者の労働力を生かすことを思い付いた。雇用契約を結び、最低賃金以上を支払う就労継続支援A型の事業所を設立。国から給付金も受け、何とか軌道に乗せることができた。

 現在登録者33人が週に3~5日ずつ、3~6時間、加工のほか農作業に当たり、野菜の下処理などに携わる人もいる。社員10人、パート・アルバイト約30人と共に経営を支える。

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 久留米市は学校などに生ごみリサイクルのアドバイザーを派遣する事業を07年以来、継続する。白仁田さんも年間30回ほど派遣される。「『生ごみ汚ーい』と言っていた児童が、価値を知ると(発酵しやすいよう)生ごみを懸命にちぎってくれるんです。それがうれしい」と笑顔を見せる。

 農業の世界ではいまだに異端の扱いを実感する。肥沃(ひよく)な土地を生かした北野ブランドの青果がある地域。「そのイメージを下げるとか畑を荒らすといった批判も聞く」。それでも「10年前、数%だった理解者が、現在は20%ぐらいにはなったかな」と共感が広がっている手応えもある。

 道の駅くるめ(同市善導寺町木塚)にある店舗「ほとめき庵」は自社農園の野菜や地元食材を使ったメニューが売りだ。当初は「野菜しかない」などのクレームもあったが、最近は「無農薬野菜がたくさん、(栄養豊富な)皮も一緒に食べられていいね」との声が届く。健康志向の高まりはビジネスチャンスでもある。

 「周囲の応援に応えられるよう地道に努力を続けるだけ」と白仁田さん。生ごみリサイクルと経営を結ぶ挑戦は続く。


=2018/01/24付 西日本新聞朝刊=

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