善玉菌に十分な「餌」を 腸内環境の改善に欠かせない「第6の栄養素」とは?

腸内細菌について最新情報が報告された中村学園大の「アジア栄養科学ワークショップ」
腸内細菌について最新情報が報告された中村学園大の「アジア栄養科学ワークショップ」
写真を見る
写真を見る

腸内フローラ<1>

 腸は食べ物を消化・吸収するところ、というのがこれまでの常識だった。ところが免疫機能という、もう一つ重要な働きがあり、そこに生息する腸内細菌も健康に深く関与していることが分かってきた。腸に宿る細菌と健康、さらに食との関係の今を報告する。

 「人間の腸内細菌は千種類、100兆個ともいわれています。この腸内細菌と人との共生関係が食生活の変化などによって破綻し、細菌の多様性が崩れてきているとの指摘があります」。1月下旬、福岡市の中村学園大の大講義室。大学の薬膳科学研究所所長の徳井教孝さんがスライドを示し、現代人の腸内事情を説明した。

 栄養科学研究科が毎年開催するアジア栄養科学ワークショップ。26回目の今回、初めて「腸内細菌と健康」をテーマにした。近年、多くの研究成果が発表される一方、未解明の部分も多い。このため確かな研究情報を明らかにして、健康維持につながる食生活を提示しようという狙いだ。

 徳井さんのほか、研究をリードする国の機関やシンガポール国立大の専門家、アジアでの国際的調査に携わった九州大の中山二郎准教授(微生物工学)の4氏が最新の成果を発表した。

    ◇   ◇

 腸内細菌のほとんどは大腸に生息している。腸壁に群がる様相が草むらや花畑(フローラ)に例えられ「腸内細菌叢(そう)=腸内フローラ」と呼ばれる。

 そこには有益に働く善玉菌と悪い働きをする悪玉菌、勢力次第で双方に働く日和見菌の3群がいる。

 善玉菌は、小腸で吸収しきれなかった食べ物の残りのうち糖類を分解して発酵、体に有用な代謝物をつくる。

 一方、悪玉菌はタンパク質や脂肪を腐敗させ、アンモニアや硫化水素などの有害物質を生成。これが便秘や肌荒れなどを招くほか、発がん性物質にもなる。

 ただ、善玉菌も悪玉菌も他の菌との組み合わせによっては逆の方向に働くこともあるという。理想のバランスは善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割とされ、「大事なことは3者のバランスを保つこと」と、腸内環境に詳しい理化学研究所(埼玉県)の辨野(べんの)義己特別招聘(しょうへい)研究員は指摘する。

    ◇   ◇

 近年、急増している糖尿病などの生活習慣病やアレルギー疾患にも腸内細菌が関わっている。

 これらを予防する鍵となるのが、善玉菌が生成する酢酸や酪酸などの「短鎖脂肪酸」だ。多様な働きが明らかになる中、その一つが血糖値を下げるインスリンへの関与。分泌を促進する方向に働き、糖尿病を防止する役割を果たすとみられている。

 短鎖脂肪酸は、過剰な免疫反応を防ぐ「制御性T細胞」の増加を促すことから、免疫反応の調節機能を高め、炎症などアレルギー疾患を抑制する作用もあるという。

 では、短鎖脂肪酸を増やすにはどうしたらいいのか。徳井さんは「善玉菌に十分な餌を与えれば発酵によって生成してくれる。その餌が野菜や果物、海藻などに多く含まれる食物繊維」と言う。食物繊維が健康に深く関与する理由がここにある。

 タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルに次ぐ「第6の栄養素」とも言われる食物繊維は、より発酵しやすい水溶性と、水分を吸収して膨らみ、ぜん動運動を活発にする不溶性がある。いずれも腸内環境の改善に欠かせない。

 「今後は、自分の体のためだけでなく、腸内細菌のために食事をするという発想が必要になる」と徳井さん。腸内細菌の力を生かす共生関係を維持するためには、バランスの良い腸内フローラを上手に育てること。そんな「育腸」が健康を守る重要なキーワードになる。

=2018/03/07付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]