肉好きの人やベジタリアン…食事の違い、腸内フローラにどう影響?

写真を見る
腸内環境を整えるには食物繊維が欠かせない。「旬の野菜を使えば大丈夫」と藤野恭子さん
腸内環境を整えるには食物繊維が欠かせない。「旬の野菜を使えば大丈夫」と藤野恭子さん
写真を見る

腸内フローラ<3>

 心身の健康に関与する腸内細菌の群れ「腸内フローラ(細菌叢(そう))」は、食事によってバランスの良しあしが大きく左右される。肉好きの人やベジタリアン(菜食主義者)、食文化の全く異なる外国人など食事の違いは細菌叢にどんな影響を与えるのだろうか。

 アジア乳酸菌学会連合が細菌叢のタイプをアジア10都市で、便の解析によって比較した調査結果(2015年発表)が手元にある。日本、中国、台湾、タイ、インドネシア5カ国・地域の小学生(7~11歳)303人を比べたところ、日中台の三つが日和見菌のバクテロイデス属菌を多く含む「BBタイプ」、残る2カ国は食物繊維を分解する能力の高いプレボテラ属菌が多い「Pタイプ」と分類できた。一般的に脂質が多い欧米食になるとBBタイプへ移行するとされる。

 福岡と東京で調べた日本の小学生は1人を除く83人がBBタイプ。善玉菌のビフィズス菌が多く、菌の多様性の低さや構成が似通っているのも特徴だった。一方、タイやインドネシアにPタイプが多い理由について、データ解析を担当した九州大の中山二郎准教授(微生物工学)は「東南アジアは穀類や野菜中心。主食のインディカ米はジャポニカ米より消化しにくいでんぷんを含み、消費量も多い。それらの食物繊維が細菌叢の構成に影響した」と推測する。

 欧米の食文化は世界的に広がっている。浸透するに従って細菌叢タイプが移行することもフィリピン・レイテ島での調査が裏付けた。ファストフードや肉、菓子の消費がより多いと回答した都市部の児童は79%がBBタイプ。対して60キロほど離れた農村部の児童は86%がPタイプだった。

 脂質が腸内環境に影響する理由の一つが、脂質の吸収を助けるために分泌される胆汁酸。一部の細菌を排除する働きもあるため細菌叢に影響するとみられる。

 細菌叢の理想のバランスは善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割とされる。ただ中山准教授は「細菌叢は遺伝的要素や相性なども関係があり、人によって理想のバランスは微妙に異なる」と指摘。かつては日本でもPタイプが多かったとみられ、都市部でほとんどを占めるBBタイプへの過渡期にある中「どのように細菌叢を健康に保つべきか研究を進めたい」と話す。

   ◇    ◇

 日本人の細菌叢を形づくってきたのは伝統的な和食だろう。ただ食生活の欧米化は日本も例外ではなく、細菌叢も変化している。

 大分との県境に位置する福岡県上毛(こうげ)町は11年、中村学園大(福岡市)と共同で住民395人の細菌叢と、排便の量や回数、硬さなどを調査。便秘が腸内環境の悪化を知る指標となる。分析の結果、高齢者より若年層に問題を抱える人が多いことが分かった。若い世代は欧米風のメニューに偏りがちで、そうした日頃の食事が影響したとみられる。

 「郷土料理を十分に作れない若い親が多いのでは」。自宅で開く日本舞踊教室で若い人と接する藤野恭子さん(69)はそう思う。同居する長男家族を含む7人のため日々、台所に立つ。周防灘の魚介類や知り合いから届く旬の野菜をたっぷり使い、取り合わせに気を付けているという料理が「病気らしい病気はしたことがない」家族の健康を支える。「地域の旬の物を食べていれば間違いはない」と実感するという。

   ◇    ◇

 「四季の野菜をふんだんに使う郷土料理は、腸内環境を整える食物繊維の摂取に大きく寄与する」と中村学園大の三成由美(みなりよしみ)教授(栄養学)は指摘する。「簡単で価格も安く、継続して作りやすい」ことから町民の食育用に「郷土食レシピ集」を10年と12年に作製、全戸に配布した。

 食物繊維の摂取量の目標は1日20グラム。「日本人は不足している人が多い。あと5グラム増やすよう心掛けてほしい」と同大薬膳科学研究所は推奨する。

 レシピには煮物、白あえ、酢の物など和食の定番メニューが目立つ。地産地消の食材と共に、地域に代々受け継がれてきた伝統的な和食だ。日本人がバランスの良い細菌叢を育てる育腸の秘策は身近なところにあった。

=2018/03/21付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]