<3>じんわり押し寄せるうまみ もとむら(佐賀市)

厨房で長男の剛さんを厳しく見守る本村敏光さん(右)
厨房で長男の剛さんを厳しく見守る本村敏光さん(右)
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 佐賀市鍋島町八戸1144の1。ラーメン570円、玉子ラーメン620円、いなり130円。営業時間は午前11時~午後8時半。定休日は水曜日。0952(26)8095。
佐賀市鍋島町八戸1144の1。ラーメン570円、玉子ラーメン620円、いなり130円。営業時間は午前11時~午後8時半。定休日は水曜日。0952(26)8095。
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 厳しい表情で厨房(ちゅうぼう)に立ち、寡黙にラーメンを作る。「もとむら」店主の本村敏光さん(72)はいかにも職人といった印象だ。「話を聞きたい」とおそるおそる切り出したが一蹴された。「店の歴史とかどうでもよか。目の前の一杯で十分じゃなかですか」

 返す言葉もなく、差し出されたラーメンを食べた。博多や久留米ラーメンを食べ慣れた人にとってはちょっと「薄い」と感じるかもしれない。元だれは控えめで、一口食べたときのパンチに欠ける。しかし、その分豚骨の風味はしっかり。徐々にじんわりと豚骨のうまみが押し寄せてくる。この“滋味さ”が佐賀ラーメンの魅力でもある。

 「ぜひ店の歴史を」と食い下がると本村さんは少しずつ口を開いてくれた。

 ラーメンにかかわり始めたのは33歳、働いていた大阪の製薬会社を辞め、古里の佐賀に戻っていた頃だという。「何か仕事をしなければ」と働き始めたのが、親戚が経営していた佐賀市の人気ラーメン店「一休軒」だった。お茶出し、注文取りなど下働きから始め、2年後にはスープ作りも任されるようになった。5年間の修業を経て1980年に独立。辞める時に「屋号を使わせてほしい」と頼み、店名は「一休軒 鍋島店」とした。

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 滋味系の味わいはもちろん、柔らかい麺、トッピングはゆで卵ではなく生卵…。そんな独自の味をはぐくんできた佐賀ラーメンのルーツは福岡県久留米市にまでさかのぼる。

 西鉄久留米駅前でラーメン屋台を出していた四ケ所(しかしょ)日出光さん(86)が56年、縁もゆかりもない佐賀市に構えたラーメン店「三九」。この店が佐賀ラーメン初期の人気店となり、その従業員がラーメンの作り方を伝授したのが、本村さんが修業した「一休軒」だ。

 「一休軒」は一昨年に閉店し、「三九」も昨年夏に火災に遭って現在は休業中。独自の味をはぐくんだ店が相次いでのれんをしまう中、本村さんはいわば佐賀ラーメン本流の系譜にあるが、本人は「作り手によって味は変わる」とにべもない。スープのだしに使う骨の部位など一休軒と変えるなど改良も加え、店名も一昨年に「もとむら」に変えた。

 厨房には長男、剛さん(40)の姿があった。本村さんは「ラーメン作りは、考えれば考えるほど難しい。まだまだですよ」と目をやるが、その鋭い眼光には、どことない温かさもあった。 (小川祥平)

=2014/10/02付 西日本新聞朝刊=

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