<59>中学の仲間との夢 実現 ろくでなし(福岡県福津市)

「友だちといえども、仕事ではしょっちゅうケンカするし、べたべたはしません」と語る中村誠さん
「友だちといえども、仕事ではしょっちゅうケンカするし、べたべたはしません」と語る中村誠さん
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福岡県福津市中央4の22の30。こってりラーメン600円、あっさりラーメン580円。年中無休。午前11時~翌3時(金、土、祝前日は翌4時、日祝日は午前0時まで)。0940(36)9525。
福岡県福津市中央4の22の30。こってりラーメン600円、あっさりラーメン580円。年中無休。午前11時~翌3時(金、土、祝前日は翌4時、日祝日は午前0時まで)。0940(36)9525。
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 「将来、一緒に楽しいことをやろうぜ」。青春時代、友人たちとそのように空想した人は多いかもしれない。ほとんどの場合が“思い出話”で終わってしまうだろうが、その通りに実現させてしまう人もいる。福岡県福津市の「ろくでなし」の誕生は、まさにそんな空想の延長だった。

 「店を一緒に立ち上げたのは地元の同級生です」。店主の中村誠さん(37)はそう話す。中学生の頃、仲間3人と「硬派クラブ」というグループを結成した。「彼女はいない。いつもつるんで家族のような存在でした」。中学、高校を卒業し、それぞれの道に進んでからも関係は続いた。ホノルルマラソン出場、富士山登山と、楽しそうなことには何でも挑戦。社会人になっても近況を報告し合った。

 店立ち上げの話が持ち上がったのは2013年夏のこと。仲間の1人が「そろそろやらんや」と切り出した。「そろそろ」とは、中学の頃にみんなで将来の夢を記したノートにこう書かれていたからだ。「ラーメン屋をやる」-。
 「『映画を撮る』『芸能人と結婚する』とかの一つですけどね」と笑う中村さんはこうも言われた。「誠、ラーメン作れるやろ」

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 中村さんは東京で過ごした学生時代にラーメンの世界に飛び込んでいた。福岡市の「博多一風堂」で学んだ店主が渋谷で開いた店でバイトを始め、ラーメン作りの楽しさに目覚めた。卒業後はそのまま就職し、店舗の拡大を支えた。旧友の言葉「そろそろやらんや」は、多くの店の立ち上げに関わり、独立も考えていた頃で心動かされた。地元に戻って14年に店を構えた。

 「あっさり」「こってり」の両看板メニューを頂いた。前者は一風堂の一杯も感じさせるすっきり味。後者は泡立った見た目通り、グイグイと攻めてくるような濃厚な味わいだった。「豚骨くさいラーメンを作りたかった。開業から半年かけて完成させたのが『こってり』です」と話す。

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 経営面で「とにかく店を大きくしたい」と考えていた。15年に宮若市、昨年10月に新宮町に支店を出すなど順調だったが、新宮への出店を機に考え方を変えることになる。「人が育つ前に店を出したのに、できてない点があると厳しいことを言ってしまう。お互いモチベーションも下がるし、『誰も楽しんでいない』と思い始めた」。基本である「楽しい」に立ち返るきっかけとなった。今は、むやみに店を増やすつもりはない。

 店ごとに限定ラーメンを提供するなど職人としての挑戦を続ける。他方、派手さはなくとも老舗のような雰囲気ある店づくりを長期的な目標に掲げる。「やっぱりラーメン作りは深いし、楽しい」。中学生の頃に空想した未来は今となって続いている。 (小川祥平)


=2017/06/15付 西日本新聞朝刊=

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