童話賞『ヒミツのニンム』全文 (作・清武琳、第48回JXTG童話賞 小学生以下の部 優秀賞受賞作品)

JXTG童話賞で優秀賞を受賞した清武琳君と愛犬のチョコ
JXTG童話賞で優秀賞を受賞した清武琳君と愛犬のチョコ
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 ぼくには、だれにもいえないヒミツがある。じつは、ぼくは、小学三年生のけいさつかんなのだ。けいさつ犬「チョコ号」と協力してわるいはん人をタイホするのが、ぼくたちのヒミツのニンムだ。

 ぼくは、クラスで一番せがひくい。チョコは、かわいいビーグル犬だ。小さな子どもと、かわいい犬だとゆだんさせて、はん人をタイホするのがぼくたちの計画だ。

 チョコは毎日、フェンスのすきまから、道を通る子どもたちを見守っている。

 子どもをねらう、あやしい人がいたら、すぐにぼくに知らせることになっているのだ。

 ある日、ついに事件が起きた。

 チョコが、あやしいはん人を発見したのだ。チョコは、ぼくにそのことを知らせようと、首わをひきちぎり、フェンスをとびこえて、ぼくの学校まで走ってきた。そして、くつ箱をすりぬけ、ぼくをさがして、学校の中を走り回った。学校中が、
「犬がいる!」
と、大さわぎになった。

 ざんねんながら、チョコは二かいのホールで、わけを知らない先生につかまってしまった。ぼくの教室まで、もうすこしのところだった。ぼくは、その時はまだ、チョコが学校に来ていることを知らなかった。しばらくして、教頭先生が、ぼくの教室へやってきた。

 ぼくは、教頭先生によばれて、しょうこう口につれていかれた。そこには、ビニールひもでつながれた、チョコがいた。

 ぼくはすぐに、チョコがはん人を見つけたのだとわかった。チョコは、はん人のことを知らせようとシッポをふってぼくにとびついてきた。でも、たとえ学校の先生でも、ヒミツのニンムのことを話すわけにはいかない。

 教頭先生が、
「きみの家の犬にまちがいないですか?」
といった。ぼくは、だまってうなずいた。
「今、家にだれかいますか?」
ときかれたので、
「今なら、お父さんがいます。」
と答えた。チョコは、事む室の先生につれられて、家に帰って行った。

 その日の夕方、お母さんが、校長先生の所に、あやまりに行った。おかしの箱をもっていたが、うちで食べる分はなかった。チョコは大型犬用の首わでつながれた。チョコも、ぼくも、くやしかった。

 でも、ヒミツのニンムのことは、家ぞくにもいえないから、ガマンするしかないのだ。

 おしくもはん人をとりのがしたあと、あやしい人は、あらわれていない。もしかしたら、チョコのこうげきにあって、こわくなったのかもしれない。タイホはできなかったが、チョコは、ニンムを果たしたのだ。

 ある日、家にいると、外からあやしい声がきこえてきた。こっそりまどをあけて見ると、フェンスの向うに、だれかいる。

 よくみると、知らないおばあさんだ。おばあさんは、どうやらチョコに話しかけているようだ。耳をすましてきいてみると、
「そうねえ。あんた、千代子ちゃんっていうとねえ。」
といっている。

 チョコの首わについている名札を見て、「チョコ」を「千代子」だとかんちがいしていたらしい。チョコは男の子なんだけどなあ、と思ったが、チョコは、うれしそうにシッポをふっている。あやしい人ではないようだ。

 おばあさんは、ずいぶん長い間、チョコとおしゃべりをしていた。チョコは、さいごまで首をかしげて、シッポをふっていた。

 チョコとコンビを組んで早二年、まだはん人はタイホしていない。この町に、わるい人はいないようだ。

 今、ぼくたちは、町の平和を守るためにはたらいている。

 うちの前を通る人たちは、大人も子どもも、チョコにあうのを楽しみにしている。チョコを見ると、みんなニコニコえがおになる。

 チョコは、にわで昼寝をしていても、
「チョコ~!!」
と呼ばれると走っていく。だれによばれても、走っていって、シッポをふる。

 もし、はん人がうちの前を通ったら、チョコを見てわらってしまって、
「やっぱり、わるいことは、やめよう。」
と、思うだろう。いつもねているようだが、チョコはちゃんと仕事をしているのだ。

 ぼくとチョコは、さんぽのふりをして町をパトロールしている。パトロール中には、知らない人から、
「あら? チョコちゃん?」
と、声をかけられることもある。

 ぼくとチョコがしっかり見はっているから、今日もこの町は安全だ。

 ぼくとチョコは、こうして町の平和を守るため、ヒミツのニンムをすいこうしている。

(おわり)

※著作権はJXTGホールディングス株式会社に帰属します。

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