【裁くということ】(1)の3 「市民感覚」判決に新風

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 市民が新しい風を吹き込んだ。裁判員裁判の量刑は、従来の裁判官だけの裁判に比べて性犯罪などで厳罰化が顕著だ。一方で殺人罪でも家族内の事件などは執行猶予を付ける例が目立つ。死刑求刑など重い事件が増え、裁判員も頭を悩ませながら審理に向き合っているようだ。

 最高裁は、裁判官だけによる裁判の判決と、裁判員裁判の判決を比較し、罪名ごとに最も多く出された量刑を分析した。裁判員裁判になって量刑が重くなったのは強姦(ごうかん)致傷、傷害致死、殺人未遂など。強姦致傷は裁判官だけの裁判では「懲役3年超5年以下」が最多だったが、裁判員裁判は「5年超7年以下」に。九州の裁判員経験者が「被害者のつらさは想像を超えていた」と語ったように、被害者感情を重視した結果とみられる。

 「被害者が亡くなっているのに、刑が軽いなぁと思った」。福岡地裁で傷害致死事件を担当した男性は従来の量刑相場を批判した。傷害致死の量刑のピークも「懲役3年超5年以下」から「5年超7年以下」に移った。

 裁判員裁判で刑が軽くなった事件も少なくない。執行猶予が付く割合は強盗致傷が8・1%から13・2%、殺人も4・6%から8・3%に。殺人では、介護疲れによる家族内の事件などで被告の心情を酌んでいる。「自分と重ね合わせた」と語った裁判員は多い。

 執行猶予判決の中で、保護観察所や保護司とつながることで更生を促す保護観察付きは、制度施行前の30・6%から55・1%と倍近くになった。「立ち直ってほしい」という期待の表れだろう。

 検察の求刑も変わってきた。例えば強姦致傷では、制度前に比べて「3年超5年以下」の割合が減り「7年超15年以下」が増えた。九州の検察幹部は「裁判員の理解が得られやすい事件は求刑を重くしている」と話す。

 さいたま地裁の首都圏連続不審死事件に代表されるように、直接の証拠がないのに死刑などの重い刑が求刑される事件はこの3年で珍しくなくなった。それに伴い、裁判員が裁判所に足を運ぶ「職務従事日数」は2009年の平均3・5日から12年は5・6日に。評議時間も平均約400分から約630分に延びた。

 裁判員経験者へのアンケートでは、9割以上が審理内容を「理解しやすかった」「普通」と答えた一方で「理解しにくかった」人は1年目より倍増。検察官、弁護人の法廷での説明の分かりやすさを聞いた数字も低下した。最高裁の竹崎博允(ひろのぶ)長官は「法律家の過度に詳しい主張・立証が増え、当初の分かりやすい審理という理念がやや後退しているのでは」と懸念する。一方で検察幹部は「事件が複雑になる以上、やむを得ない面がある」と受け止める。
(久保田かおり)

=2012/05/22付 西日本新聞朝刊=

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