「給付型」奨学金、創設相次ぐ 養護施設からの進学後押し

 児童養護施設を出て大学や短大に進学する若者を対象に、返済不要の給付型奨学金や一時金を創設する自治体が相次いでいる。返済が必要な国の貸与型奨学金事業で返済不能に陥る人が増えている中、学費や生活費を全て自分で賄わなければならない最も厳しい環境にいる若者の学びを支援し、「貧困の連鎖」を断ち切りたい考えだ。

 親による虐待などを理由に、児童養護施設で暮らす子は全国で約3万人。大学や短大、専修学校などの高等教育機関に進学するのは22・6%で、全高卒者の76・9%と比べ開きがある。

 進学後もアルバイトに追われ、体を壊して中退する学生が少なくない。九州・沖縄の89施設に対する2011年度の調査では、06~10年度に進学した210人中、29人が中退。うち16人が経済的理由を挙げた。

 給付型奨学金は京都市が14年度に創設。在学中の特例で、施設退所を延長できるのは20歳未満までのため、20歳以上となる大学3、4年生の学費の半額(上限年36万円)を補助する。

 長野県も15年度から、月5万円を最大4年間支給。この春からは、東京都世田谷区が月3万円を最大4年間、札幌市が「生活が軌道に乗るまで」として月5万円を1年間支給する。

 一方、九州では入学金や住宅費としての一時金支給が主だ。北九州市の取り組みが早く、12年度から入学金に29万円、住宅費に20万円を補助してきた。

 福岡県はこれに倣い、今年4月から進学費用として30万円を上限に支給を始めた。本年度は10人の利用を見込んでおり、「進学は無理とあきらめていた若者の後押しになれば」と話す。宮崎県は15年度から受験料と受験の交通費(最大計10万円)を補助している。

 「貸与型」32万人未返還

 全学生のおよそ2・5人に1人が利用している日本学生支援機構による貸与型奨学金は、未返還者が14年度で約32万8千人、総額は約898億円に上っている。非正規雇用など卒業後の就労環境が不安定で、借金返済に追われるケースもあり、国による給付型奨学金の創設が急務との声が強まっている。自治体による児童養護施設出身者への給付型支援の拡大が、貧困に苦しむ若者全体への支援につながるか注目される。

 文部科学省によると、民間財団や大学などが行っている給付型を受けているのは全受給者の1割で狭き門だ。熊本県は11年度から生活保護世帯からの進学者に生活費を無利子で貸し付けると同時に、10万円を給付する制度を設けたが、こうした自治体は少ない。

 自治体による施設出身者への独自給付が広がっているのは、「家族による使い込み」など不正の恐れが低く、市民の理解を得やすいためとの側面がある。

 一方、国と地方は本年度から、施設出身者への月5万円の貸付事業を始めたが、「仕事を5年間継続すれば返済免除」との条件付きで、厳しすぎるとの批判がある。安倍晋三首相は3月末、一般学生への給付型奨学金の創設を明言したが、財源や対象者など具体像は示していない。

 元文科省官僚の寺脇研・京都造形芸術大教授は「給付型奨学金は住む場所による差があってはならない。全ての若者に高度な教育機会を与えることは社会全体のためになる」と国による創設の必要性を訴える。

 その上で「貧困の世代間連鎖を断ち切るためには、生活保護世帯出身者にも学費減免など国民の理解が得られる方法での支援が求められる。自治体の試みはその風穴になるのではないか」と期待を寄せる。

=2016/04/05付 西日本新聞朝刊=

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