貧困経験を糧に親子食堂 無料券で既存店利用 宮崎市の富井さん

生活に苦しむ親子への支援物資を整理しながら、子ども食堂について話す富井真紀さん=宮崎市
生活に苦しむ親子への支援物資を整理しながら、子ども食堂について話す富井真紀さん=宮崎市
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 幼い頃、貧しさにあえいだ宮崎市の富井真紀さん(34)が、貧困の連鎖を断とうと同市で子ども食堂を運営している。自ら食事を提供するのではなく、賛同する飲食店で使える「無料チケット」を渡し、既存店を利用する独自の方法で開設コストを抑えた。食堂に集まる親子と公的支援の橋渡しも担い、貧困層を掘り起こして支えている。

 食堂の名称は「プレミアム親子食堂」。昨年1月、富井さんが代表理事を務める子育て支援団体の事業として始めた。ひとり親家庭など生活困窮世帯の親子に毎月1回、無料チケットを渡し、提携する市内の8店舗のいずれかで食事をしてもらう。代金は団体が寄付金などで負担。登録する親子は約100人に上る。

 全国で急増する子ども食堂は、場所や開設資金の確保、食中毒対策のほか、貧困世帯の掘り起こしが課題だ。富井さんは、コスト面などをクリアでき、利用する側も人目を気にせず通えるとして知人らが経営する既存店の活用を思い立ち、行政を通じて生活保護や児童扶養手当の受給世帯にチラシを配って周知した。

 活動の背景には富井さんの原体験がある。父子家庭に育った幼少期、父がパチンコで借金を抱え、満足に食事ができなかった。借金の取り立てに遭い、服は祖母の手作り。頼みの綱だった祖母の年金も、パチンコに消えた。中学校を卒業すると家を飛び出し、夜の街を転々として働いた。最初の結婚で長女をもうけたが離婚。シングルマザーとして長女を育て、今の夫(44)と再婚した。

 自らの家庭環境が少し落ち着いた頃、「貧困家庭の子どもはその日の食事さえままならない。一刻を争う」との思いが募り、2015年に団体を設立、子ども食堂の開設につなげた。

 富井さんは食事を求める親子と必ず面会し、生活保護などの支援が必要なら行政機関に紹介する。貧困世帯は公的支援との接点が少ないと感じるからだ。

 寄付で集まった物資や食材を提供し、継続的に支える取り組みも始めた。「夕方、子どもに飲ませるミルクがない」「夫の暴力がひどくて、赤ちゃんと家を飛び出した」-。救いを求める悲痛な声は続々と届く。

 食堂を始めて1年。アレルギーのある子どもへの献立など課題はなおある。ただ、社会に潜む貧困がどれほど多いか肌で感じた。富井さんは「支援の輪をもっと広げ、子ども食堂が必要のない社会にしたい」と語った。

=2017/02/09付 西日本新聞朝刊=

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