「しつけで暴力」変わる 虐待陰湿化につながる 親の体罰禁止改正法案提出

 体罰禁止を明記した児童虐待防止法などの改正案が19日、閣議決定された。「しつけ」と称し、わが子に手を上げた経験のある親や被害を受けた子どもからは、「体罰はだめ」という意識の広がりを望む声が聞かれた。一方、法改正にとどまらず親子の支援態勢の強化など子育て環境の改善を求める意見も相次いだ。

 「しつけに暴力は必要という世間の考えは変わるかも」。福岡市の2児の母親(36)は言う。幼い自分を朝まで正座させ説教し、平手打ちした父。「これは愛情よ」と言った母の言葉が今も自分を苦しめる。

 しかしその影響なのか。今度は自分がわが子を否定する言葉を浴びせている。「両親と違い、しつけで暴力はだめと頭では分かっているのに…」。虐待の連鎖に苦しむ自分のような親にとって、法改正がどれほど効果があるかは分からないと明かす。

 「法で定められたから『はい、やめます』なんてなりますか」と疑問を呈するのは福岡県糸島市の女性(36)。育児ストレスから乳児の長男を繰り返したたいた過去がある。「回数や力をコントロールできない自分が怖かった」。そんな自分に寄り添い、救ってくれたのは親や保育園など周囲の人々。法の抑止力だけでなく、親のケアなど支援態勢の重要性を訴える。

 親権者に子どもを戒めることを認めている民法の「懲戒権」の見直しも検討される。これについて、父からしつけと称する虐待を受けて育った福岡県内の女子大学生は「国が法的に体罰を許していたなんて」と驚く。体罰禁止が明文化されることで「違法行為」との認識が広がり「虐待を見聞きした周囲が積極的に警察などに通報するきっかけになれば」と願う。

 改正案では児童相談所で、子ども保護の職員と保護者支援の職員を分け虐待家庭への介入体制を強化する方針。わが子を児相に保護された経験がある福岡市の会社員女性(44)は「児相介入がきっかけで自身の虐待を認識できた」と言い、子の安全のために必要と受け止める。ただし「手を上げるなと法で縛り過ぎるとかえって親を追い詰めないか」と懸念。虐待の陰湿化にもつながると不安視する。

 父親の子育て支援に取り組むNPO法人ファザーリング・ジャパンの林田香織理事(47)は米国での子育て経験から「米国では子を個人として尊重する『個育て』を学んだ。一方で日本では親子や夫婦は主従関係という価値観が根深い」と指摘。「そうした価値観に基づく子育て環境を変えない限り、根本解決には至らない」と話した。

=2019/03/20付 西日本新聞朝刊=

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