動物看護師は飼い主との懸け橋<20>

竜之介動物病院の診察室。動物看護師(右)はなくてはならない存在
竜之介動物病院の診察室。動物看護師(右)はなくてはならない存在
写真を見る

 動物病院には毎日、たくさんの動物と飼い主が来ます。治療にはペットと飼い主の関係や飼育環境などが大きく関係するため、動物だけでなく、飼い主や飼育環境も診なければいけません。動物病院は動物のためだけの病院ではないのです。

 竜之介動物病院(熊本市中央区)の動物医療チームには、獣医師の約10倍の「動物看護師」がいます。動物看護師の仕事は、診療補佐、手術の準備と助手、入院動物の管理や検査、カルテ整理など多岐にわたります。一番大切なのは、獣医師と、動物や飼い主の懸け橋となることです。

 飼い主は獣医師に聞きにくいことでも、動物看護師には気軽に聞けるようです。獣医師との間には、どれだけ信頼関係があろうとも何かしらの壁や距離がありますが、その間に立ち、思いや言葉をつなぐのが動物看護師の役目です。

 民間資格の動物看護師は現在、専門学校などを卒業すると受験できます。看護技術や知識もさることながら、コミュニケーション力や優しさなど人間的な力も要求される究極の専門職だと思っています。診療現場で積み重ねる経験や元々持っているセンスが大きくものをいいます。

 4月の熊本地震、私の病院では動物同伴避難所を開設しました。動物看護師たちは初めての避難所運営を担いつつ、通常診療もしていました。あれから8カ月。当時の話を聞いてみました。

 「目の前の動物と飼い主に向き合い、ただ必死の毎日。どうやって乗り越えたのか、思い出そうとしても記憶がない」と言います。子どもを比較的被害が少なかった実家に預け、家のことは夫に任せて働いた人、生まれたばかりの子どもを妻に任せ、避難所から通ってきた人、家に帰る時間もなく、わずかな睡眠を車中泊で補っていたという人もいました。

 正直、話を聞くまでは、そんな極限状態にあったとは気付きませんでした。ここで働く人たちもまた被災者だったのだと気付かされました。

 というのも、動物看護師は緊急事態でも獣医師がいつも通りに診療できるよう、的確にサポートしてくれました。多忙な業務をこなしつつ、患者や避難者の前ではいつも笑顔で「お変わりないですか」「不安はよく分かります」などと声掛けを忘れませんでした。彼らが安らげる雰囲気や環境をつくってくれていたから、非常事態を乗り切れたのだと思い知りました。

 「動物のために、人のために、社会のために」。病院が掲げる精神をスタッフが理解してくれているから、私は思い描く動物診療を実践できています。動物看護師はなくてはならない存在であり、あらためて感謝します。

(竜之介動物病院長 徳田 竜之介、熊本市)

=2016/12/15付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]