小さな命を いつも気に掛けて<21完>

徳田竜之介さんと病院で飼っている土佐犬
徳田竜之介さんと病院で飼っている土佐犬
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 ペットの毎日は、飼い主が全てです。飼い主が遊び相手になること、うれしかったことも悲しかったことも語り掛けること。そうしたコミュニケーションや自然な対話は、ペットにとって何よりも大切です。

 日常的で、ごく自然な触れ合いができるかどうかは、動物に対する感性に左右されます。この感性は、動物に関わる仕事をする私たちには、重要な力であり、動物の存在を意識し、いつも気にかけることで磨かれる力だと思います。

 例えば、獣医師がよく対応する症例の一つに「ペットを踏んづけてしまった」という事故があります。子猫が思い切り踏まれて担ぎ込まれることが多く、一命は取り留めてもかなりの重症です。

 踏んでしまうのはたいていその家のお父さんや子ども。「そこにいると思わなかった」がお決まりの言い訳です。事実、ペットがそこにいることに気付かないのです。

 動物と暮らしている感覚が薄かったり、感覚が育っていなかったりする飼い主に多い事故です。つまり、動物に対する感性が弱いのです。ほんの少し気を配れば防げるはずの事故が、こうした「感性の弱さ」から起こってしまう。残念ながらよくあります。

 これが、動物と接する感覚が育っている飼い主だと、もし踏んでしまったとしても、軽く踏むのです。いつもそこに動物がいる感覚が備わっているので、踏んだ瞬間「あっ」と気付いて脚を上げるのです。これが感性の差です。

 どんな教科書にも書かれておらず、動物に気を配って接する人たちなら、肌感覚で理解できること。例えば、ドアを開けるとき、「そこにいるかもしれない動物」を思い、一瞬の確認を怠りません。ドアを開けたと同時に、ペットが一緒に飛び出してしまうかもしれないと注意を払います。動物の予期せぬ動きに気を配ることが動物を万が一の事故から守るのです。

 常に、動物と共にある感覚が備わっていれば簡単です。感性を研ぎ澄ませて「動物のいる空間」を意識している。この感覚がどれほど動物を安心させ、その小さな命を守ることに役立っていることか。

 身に付ける方法は、実に簡単です。動物と共に暮らしているんだと認識するだけでいいのです。この家に、この街に、そしてこの世界に「私たちと動物は共に生きているのだ」と意識すること。ただそれだけです。ペットを飼っている人はもちろん、飼っていない人もぜひ習慣にしてください。

 最後まで読んでくださった方に心から感謝を申し上げます。動物と共に生きられる社会が、人間にも生きやすく、優しい社会であることを、これからも伝え続けていきたいと思います。
 =おわり

(竜之介動物病院長、熊本市)

=2016/12/22付 西日本新聞朝刊=

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