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【連載】赤手拭(てのごい)動く 博多祇園山笠<7>人生 山笠課長の覚悟

2009年06月28日 11:26
神事の準備中、他の赤手拭と打ち合わせする臼井隆弘さん(右)
神事の準備中、他の赤手拭と打ち合わせする臼井隆弘さん(右)
 ヤマと聞くだけで血が騒ぐ。「山笠課長と呼ばれていたかも」。土居流の赤手(て)拭(のごい)、臼井隆弘(46)=福岡市博多区上川端町=は今年1月まで下着メーカーの課長。山笠抜きで語れない会社員時代を苦笑いで振り返る。

 ミスをした直属の部下を上司の部長が直接しかろうとしたことがある。「ヤマが動かんくなります」。上司の前で、舁(か)き山笠に例えて訴えた。あぜんとする部長。上下の関係を無視し、課長の自分を素通りする行為が許せなかった。

 武勇伝はまだ続く。寝坊がひどく、遅刻の多い20代の男性社員が異動で直属の部下に。社内の多くはさじを投げていたが、臼井は違った。男性の家に泊まり、朝になると布団を引っぱがす。何度か続けるうち、定時に出社し始めた。「本気で向き合い、しかる」。熱い心意気は山笠が培った。

 原点は福岡大時代に出合った漫画だ。山笠を軸に青春を描いた「博多っ子純情」。赤手拭となる主人公、郷六平の生きざまにあこがれた。

 社会人1年目の23歳で土居流の片土居町の一員に。いちずさが買われ、38歳で赤手拭になった。赤手拭の筆頭にまで上り詰めた役職を「中間管理職」と表現する。取締の指示の下、“部下”である若手たちの間を取り持ち、流を円滑に運営しなければならないからだ。

 現場で危機管理力を試されることもある。路地の電柱は危険個所の一つ。山笠と電柱に舁き手が挟まれる恐れがあり、直前に知らせる役は重要だ。ある若手が、その役を忘れていた。臼井は水法被をつかみ、「よく見とかんか」と、手を振るしぐさを教えた。大けがにつながりかねなかった。

 筆頭赤手拭として初めて当番町を経験する今年、会社を辞めた。大阪にいた3年前、転勤がないことを条件に部長から課長への降格を受け入れてまで福岡市に戻った。が、今年になって命じられたのは東京への異動。再就職先の保証はなかったが、祭りに懸ける気持ちを優先した。「山笠は人生の背骨です」。覚悟は揺らがない。 (敬称略)

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 ▼舁き山笠の配置 通常、舁き手は26人で次々と交代しながら舁く。「鼻取り」が左右両端の一番棒の縄をつかみ、かじ取りをする。「前さばき」は、山笠直前の交通整理を行う。「あと押し」は見送りを手で押し、山笠推進の原動力となる。


=2009/06/27付 西日本新聞朝刊=

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