山笠ニュース

赤手拭(てのごい)動く 博多祇園山笠<9>ごりょんさん 子は地域の宝物

2009年07月01日 18:08
浅野賢一さんに抱かれた太志君をあやす、みつ子さん
浅野賢一さんに抱かれた太志君をあやす、みつ子さん
長男田中宏明君の水法被のサイズを確認する佳代さん
長男田中宏明君の水法被のサイズを確認する佳代さん
 まだ湿った長さ約3メートルの締め込みをアイロンでグイッと押さえつける。湯気の向こうでは、1歳の長男太志の夜泣きが止まらない。「とにかく間に合わせんと」。浅野みつ子(34)=福岡市博多区対馬小路=は、必死に朝方まで両手を動かした。

 昨年7月、舁(か)き山笠が本格化する追い山前の約1週間。夫賢一(32)は大黒流の赤手拭(てのごい)。深夜帰宅し、3時に朝山で家を出る日もある。舁き出しが迫る未明、着衣を洗濯し、締め込みと格闘する。時には一睡もせず、看護師の仕事に出かけた。

 当番法被を着込んだ男衆の目つきが鋭さを増す祭り本番。裏方として支える妻たち「ごりょんさん」の忙しさもピークになる。特に赤手拭の妻の苦労も並大抵ではない。

 2年前に結婚したみつ子。結婚前から、“ごりょんさん修業”が始まった。60―70代のベテラン主婦がてきぱきと指示を出す。数軒の台所で約10人が大皿に直会(なおらい)用の空揚げやおにぎりを次々と盛っていく。数十個のおわんには汁物が用意された。手際の良さに圧倒された。終了後、「自分は博多の女性になれるのか…」と不安を覚えた。

 しかし3年目を迎えた昨年、みつ子に「ありがとうございます」。直会の会場そばに来た水法被姿の園児や児童が元気いっぱいに頭を下げた。配膳(はいぜん)の手を休め、ほおが緩んだ。幼い笑顔に長男の成長した姿を重ねた。家庭だけでなく地域全体で礼儀作法を教える。「ここで育てばしっかりした大人になる」と感じた。

 昨年まで夫が西流の赤手拭だった田中佳代(39)=同区奈良屋町=も、地域ぐるみの子育てパワーを実感している。近所の母親同士で、子どもの山笠用品のリサイクル情報を交換する。成長が早い子どもは、サイズがすぐに合わなくなる。

 3人の子どもがいる佳代は「山のぼせ」の長男宏明(9)に水法被を着せながら、「山笠に出るとよその子も、息子の兄弟のように感じます」と話す。祭りを通じて、子どもは「地域全体の宝」という意識が高まる。 (敬称略)

    ×      ×

 ▼女性と山笠 博多では奥さんを「ごりょんさん」と呼ぶ。山笠では夫の身の回りの世話や直会の食事の準備などをして支える。女性は直接山笠に参加できず、かつて「不浄の者立入るべからず」と記した看板が詰め所などに立っていた。2003年に「時代にそぐわない」と全廃された。


=2009/06/30付 西日本新聞朝刊=

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