ホークス工藤監督 涙のV奪回 リーグ史上最速 タカ通算20度目

2年ぶりのリーグ優勝を決め、胴上げされる工藤監督
2年ぶりのリーグ優勝を決め、胴上げされる工藤監督
写真を見る
優勝監督インタビューの途中、感極まり声を詰まらせる工藤監督
優勝監督インタビューの途中、感極まり声を詰まらせる工藤監督
写真を見る
おどけたポーズを見せるサファテと工藤監督
おどけたポーズを見せるサファテと工藤監督
写真を見る
松田(右)と福田から、たるに入った酒をかけられる工藤監督
松田(右)と福田から、たるに入った酒をかけられる工藤監督
写真を見る
祝勝会でナインを前にあいさつする王会長
祝勝会でナインを前にあいさつする王会長
写真を見る
中村晃にビールを掛けられる松田
中村晃にビールを掛けられる松田
写真を見る

 歴史的V逸の翌年は歴史的V奪回だ。福岡ソフトバンクが2年前の記録を更新するパ・リーグ最速で20度目(1リーグ時代の2度を含む)の優勝を果たした。昨年は日本ハムに最大11・5ゲーム差を逆転される屈辱を味わった工藤公康監督(54)は選手たちの手で7度宙を舞い、インタビューで涙。最短で王座に返り咲き就任3年で2度目の頂点に立った。ソフトバンクは10月18日から本拠地でクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージを戦う。

 あふれる感情を抑え切れない。胴上げ後の優勝監督インタビュー。マイクを向けられた工藤監督がすぐに声を詰まらせた。「リーグ優勝を昨年はできず、クライマックスで負けてから1年弱…、この事だけを…思って……」。くしゃくしゃの顔に、涙が流れた。昨季誰よりも屈辱を味わった男が、リーグ史上最速の圧勝Vでそれを晴らした。

 「選手たちが勝った瞬間の笑顔が見られて本当に良かった。屈辱を絶対に晴らすんだという強い思いを持って戦ってくれた」

■指揮官7度舞う

 悔しさに向き合うことから再出発し、頂点に返り咲いた。昨季は最大11・5ゲーム差を逆転されてのV逸。自身の采配への批判が嫌でも目や耳に入った。勝負の世界で30年以上生きてきた。「結果がすべて」。それは理解しているが、毎年優勝を義務づけられるチームの指揮を執る意味を、痛いほど思い知らされた。

 当然、迷いも出た。プロ入り時の監督で師と仰ぐ広岡達朗氏からは「いろいろ言われても自分の思った通りに進め」と、電話越しに励まされた。敗者となって数日後。自宅近くの喫茶店の奥まった目立たない席に一人腰かけた。アイスコーヒーの横に真っさらなノート。人前で見せない眼鏡をかけ、屈辱に正面から向き合い、今季へ向けてペンを走らせた。立ち止まっているわけにはいかなかった。

 V逸の要因の一つは夏場以降の失速だった。選手の調子の上下動、そこに起因したものは何か、移動ゲーム時の個々の成績など、スコアラーらに任せる本筋のデータとは違った角度から自らも分析した。「投手も打者も、一度(状態が)落ちると戻るまで時間がかかる」。いかにシーズンを通して力を発揮させ続けられるか-。覇権奪回への道筋を見つめ直した。

 屈辱を起点に描いたその「Vロード」を走った。参謀役として達川ヘッドコーチを招聘(しょうへい)し、森作戦兼バッテリーコーチ補佐を抜てきしてベンチを強化。前半から楽天が首位に立ち続けても、ぶれなかった。相手がローテ変更で主戦級をぶつけてきても、石川、松本裕ら経験の少ない若手に先発を任せたこともあった。「最後に頂点に立つ」からの逆算。打の主軸を試合終盤で途中交代させたことも少なくない。

■自らデータ分析

 賛否両論あることも当然理解しているが、反対意見に負けないだけの「汗」を脳にも体にも流している。黒い手帳と2冊のノートには日々、気付いたことをびっしりと記す。コーチ、トレーナーらから上がってきた情報は、選手ごとに分けiPad(アイパッド)に保存。膨大な量の「生のデータ」と格闘し、最後に頂点に立つための策を練り続けた。昨季失速した終盤に強烈なスパートをかけぶっちぎったVは、誰よりも屈辱を味わった男の意地だ。

 2年越しの約束も果たした。昨夏、地震後の熊本へ足を運びVを誓ったが、届けられなかった。冬に再訪した際は保護者らが畑を改造した仮設グラウンドで球を追う子供らを目にし、あらためて優勝を約束した。「勝つことで少しでも元気になってくれる人がいる」。7月には九州豪雨で被害を受けた福岡県朝倉市をお忍びで訪問。子供らの列が途切れるまで日が暮れても色紙にペンを走らせた。

 昨年12月末。自宅のある横浜市内に球団幹部が足を運んできた。当初は今季が3年契約の最終年だったが、打診されたのは新たな3年契約。託されたのは、さらなる「常勝軍団」の構築だ。今季は1カ月おきに2、3軍の投手コーチとのミーティングを開催。「時間が足りない」と頭をかきながら、育成選手も含め全投手の映像を確認し、一人一人の育成プランを練ってきた。

 秋山前監督からバトンを引き継ぎ就任1年目で優勝を飾った15年。東浜、千賀、岩崎をほぼ1年を通じて2軍の先発ローテで固定起用した。「まずは投げる体力。昼間の外で常に完投できないと1軍ではもたない」。同年秋のキャンプでは自らも汗だくになり厳しい指導を続けた。今季の東浜はリーグ最多の16勝。千賀はここまで13勝、岩崎は同じくリーグ最多の68試合の登板でVを支えた。「彼らは『ホップ、ステップ、ジャンプ』の、まだステップ」。工藤ホークスの真価は、もっと先にある。 (倉成孝史)

◆7月以降の貯金昨年0→今年28

 ソフトバンクが2年ぶりに優勝。1年を挟んでの最短V奪回はパ・リーグ9度目、球団では55、61年に次ぎ3度目。9月16日の決定は15年ソフトバンクを1日更新するパ最速となった。昨年は貯金が6月まで29→7月以降0と失速したが、今年は20→28と加速。首位再浮上した8月15日からは20勝4敗、9月1日にマジックが16で点灯後はわずか1敗でゴールした。新人監督最多タイの90勝を挙げた工藤監督は鶴岡一人、三原脩両監督に次ぎ史上3人目となる2度目の90勝超えに王手をかけた。

=2017/09/17付 西日本スポーツ=

◆ファンタブで和田毅ファミリーシート(コカ・コーラシート)が当たる!

今日の西スポ紙面はこちら 西スポプラス

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]