ホークス球団社長を直撃【2】若手が芽を出す“新陳代謝システム”とは

パ・リーグ優勝を決めた工藤監督(左)と握手を交わす後藤球団社長
パ・リーグ優勝を決めた工藤監督(左)と握手を交わす後藤球団社長
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2016年3月に完成したソフトバンクのファーム本拠地「HAWKSベースボールパーク筑後」。奥はJR筑後船小屋駅
2016年3月に完成したソフトバンクのファーム本拠地「HAWKSベースボールパーク筑後」。奥はJR筑後船小屋駅
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 ソフトバンクがパ・リーグで最も早い日付の9月16日に優勝。後藤芳光球団社長兼オーナー代行(54)が西日本スポーツの単独インタビューに応じた。第2回はフロントと現場一体で構築する「若手が芽を出すシステム」。2年目となった福岡県筑後市のファーム施設についても語る。

 -8月まで楽天とマッチレースの様相が、優勝決定時で2位西武に14.5ゲーム差がついた。

 「今年の勝ち方は、最高の勝ち方。フロントも監督も目指した最高の勝ち方で勝てた年になる。選手個々の頑張りが第一だが、監督やコーチが考えていることと、フロントが考えていることが合わさって。僕はいつも例えとして『レギュラーシーズンはマラソンだ』と言い続けているが、35キロ地点からグッとギアを入れて、一緒に走っていた選手を、あっという間に引き離せた。マラソンは体力、気力、全部兼ね備えていないと走れないだろう。楽天が連敗した側面はあるが、バランスを失うところを、ウチは失わずに走れた」

 -そこまでの過程についてはどうか。

 「最終的に独走で勝てたのは最高。途中までの形は問わない。ただ、トップ集団ではずっと走っていたい。最後にグッと抜け出して、独走でゴールテープを切る。『こういう勝ち方をしたい』と思っていた、理想的な勝ち方ができた」

 -今季ソフトバンクには故障者が相次いだ。和田、武田、千賀に、内川、デスパイネも離脱。

 「今だって内川、それから川崎も治療で頑張ってるが、このくらいの比率で主力選手が戦列を離れるのは想定済み。そういった主力の状態が整わない時に、上林とかが出てくる。そういう機会を上手につくっていける。頑張ってこれまで貢献してきてくれた選手も毎年、年を重ねる。体の手入れは今まで以上に丁寧にやってもらったらいい」

 -世代交代が促進される。

 「『後輩に道を譲る』という意味ではない。常に最高のパフォーマンスを出すためには、場合によっては1年間、全試合出る必要はないと思っている。少しメンテナンスしながら、出た試合では必ず3割打つと。試合比率で(試合数に対して多く)どんどん打点も稼ぐ。そういうパフォーマンスを出してくれるのがチームにとって最高。その方が、選手も長続きするじゃないか。40歳を過ぎても活躍できるような選手がたくさんいることは素晴らしいことだ」

 -今季は主力が途中交代するケースが多かったが、そうした戦略を工藤監督と話した結果か。

 「している。こちらから話しているし、僕は選手を大切にしたい思いが強い。肉体労働だからケガをする。ケガをしても、何でも早いうちに治しにいけば、早く治る。例えが悪いかもしれないが、ゴルフでディボット(削り取られた芝)跡ができる。できた直後に直せば、次の日には直る。1日たって直すと、1カ月かかる。しばらく直さないと、1年。それと全く一緒」

 -手当てを急いで長期離脱を減らす考え方。

 「だから違和感を覚えたときは…昔の人は『今の選手は弱っちい』と言うが、そうではなく、本来こうあるべき。肉体を駆使してパフォーマンスを出すわけだから。チームとして最高のパフォーマンスを出してもらうため。『実はちょっと肘が痛えんだけど、動けるし、試合に出るか』って言ったって、打った時に『ウッ、痛い』と思ったら振り切れない」

 -よくある話だ。

 「そういう状態で無理して出てもらうより、3日休んで、完全にして出てほしい。その3日間を、僕らは有効に使いたい。2軍で、1軍に出たくてウズウズしてる若い連中を、ちょっと出してみる。この辺がチームの3年後、5年後に関わってくる。常に20代が主力のチームづくりをするため。監督やコーチ陣と、フロントの意思疎通は大事。意思疎通のレベルでも、この1年間、非常にうまくいったのではないか」

 -定期的なミーティングなどあるのか。

 「いや、そこはもう随時。僕は普段、東京(ソフトバンク本社)にいるから十分に時間が取れないが、球団統括本部の三笠(本部長)や簑原(副本部長)さん、永井(本部長補佐)君が。永井君は元選手(ダイエー、ソフトバンク投手)としての経験も十分、生かしてくれている。このフロント3人がしっかりしているので、向こう(東京)からでも、選手や監督とのコミュニケーションは、安心して見ていられる」

 -球団として課題認識を明確に持っていた。

 「特に野手についての、次世代に対する漠とした危機感というのがある。候補になる人間はバーッと出てくるが。今、20代の戦力が非常に整っているから(その戦力が)みんなが元気だったら、若い選手がなかなか1軍で出られないところはある。でも、それを乗り越えてくる選手が出てくるようにしたい。選手が自己目標として『今、1軍のあの選手を乗り越えないと自分は(レギュラーに)なれないな』という思いを持っていてくれればいい。そうしているうちに、どうしても故障者は出るし、ケアの必要なとき、思い切って休んでもらえる」

 -工藤監督も選手の故障予防には一家言ある。

 「就任当初から、工藤監督も体の手入れの重要性は説いていた。僕は、そういうことを監督が一番に言ってくれるのはいいな、と。連続出場が何より大事という考え方は、少なくとも僕は持っていない。美しいけど『骨折しても出る』というのは。でも、何のためなんだろうなと」

 -その工藤監督とはV逸直後ながら3年契約を結び、今春のキャンプイン直前に発表した。

 「その点については、全く迷いなし。確かに去年は失速して優勝できなかった事実はある。結果として負けた。だからと言って一回負けたから責任取るのかと。83勝して、悔しくて眠れないぐらいだけど、最後、競走で向こう(日本ハム)にテープを切られてしまった。その経験を、今年どう生かすかというのがすごく大事だった」

 -その分の上積みを期待した。

 「その経験があれば、去年負けた段階でもう、今年はほぼ、かなりの確率で勝てると思った。あの経験ができたから。それを実際に監督にやってみてもらいたい。去年、戦ってる最中から、王道に従って、ちゃんと自分たちの考えていることを、前倒し、前倒しで監督にもきちんとお伝えして、監督にも覚悟を持ってもらって。だから、早い時期から100%の既定路線で考えていた」

 -筑後のファーム施設は2年目。感触は。

 「あれを造るのは実は相当、悩んだ。相当悩んだが、思い切って造って、本当によかったなという投資。やっぱり相当な投資金額になる。それがはた目には、投資回収が難しいようなコストセンター(収益が計上されない部門)に見えるわけだ。それをどういうふうに昇華しいくか。金額的に言えば60億、70億になって、さらに付帯するものも乗せれば、すぐ100億近くなっちゃう。100億はかかってないが(笑)」

 -慎重にならざるを得ない投資額だ。

 「それを将来、これから5年、10年、20年のホークスの計として、どう考えるか。それはまず第一に育成の観点からの必要性。これありきだが、加えて、施設自体にどうやって、今までにないような収益化をするチャンスがあるか。事業サイドとも、ものすごく(案を)たたいて。事業責任者も決めて。1年以上、議論しながら、モデルをつくって、それで走りだして、やってみて。お客さんが雁の巣(2軍の前本拠地)の10倍ぐらい来てるわけで。いろんな意味で…全ての観点で、本当にやってよかった」

 -設備については。

 「もうできて2年だろう。新しいものを入れなきゃならんし、もっと増やさないと。将来的には、2軍で練習する…例えばバッティングマシンなんてのは、日本を代表するピッチャーの球筋が、マシンごとに全部投げられるような。大谷(日本ハム)とか菊池(西武)が、それぞれ顔も付いてて、20人ぐらい並んでると。そこで全員が打ち込みの練習をする。そういう姿を想像したい。それで、ピッチングマシンがAI(人工知能)でコントロールされて、バッターに対しての配球とか、考えて投げてくれる。そういうバッティングマシン。ソフトバンクらしいマシンをつくりたい」

 -かなり壮大な話だが。

 「実はそのための産学連携みたいなものも、ひそかにやり始めたりはしている。野球のルールの中でね、AIをどれだけ活用できるかというと、さすがに1軍の試合で何かするのはちょっと早すぎるが、練習の場で生かすのは、どれだけ生かしたって自由。そういったものでどんどん差がついて、結果的にチーム力の差もついていく」

 (3に続く)

=2017/09/18 西日本スポーツ=

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