ホークス球団社長を直撃【3】李大浩の穴を甘く見て大逆転V逸のトラウマ

モイネロ(左)に声を掛けるデスパイネ
モイネロ(左)に声を掛けるデスパイネ
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パ・リーグ優勝をナインと喜び合う川崎(中央)
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 独走でパ・リーグ優勝を決めたソフトバンクの後藤芳光球団社長兼オーナー代行(54)が、西日本スポーツの単独インタビューに応じた。第3回は育成と対を成す「補強」を語る。3連覇を逃した昨季の、大砲の補強見送りを「僕らのミス」とざんげ。必要とあらば批判覚悟で動くという。

 -今季の補強戦略はどう考えていたか。

 「毎年、考えてることもあるし、去年負けて、われわれフロントなりに、さらにやらなきゃいけないと考えて、ピンポイントで補強した部分がある。それが奏功した」

 -昨季は、契約を延長せず米大リーグに移籍した李大浩の穴を埋められなかった。

 「あれは、やはり僕らのミス。ウチには長距離を打てる選手が何人もいる。李大浩が抜けた後、彼らがきっと活躍してくれて、十分、穴は埋めて余りあるだろうと考えていた。ここが若干、冷静さを欠いたところ。優勝した直後で、自分たちの選手のいいところばかり見ているのだ。フロントとしては甘すぎた。結果的にはあの年(2016年)、ホームラン数が非常に少なかった」

 -チーム本塁打数は李大浩がいた15年が12球団最多の141で、16年はリーグ3位の114だった。

 「なので、ピンポイントの補強。去年は『大砲を取る』。デスパイネとテイムズ(当時韓国・NC、現米大リーグ・ブルワーズ)でだいぶ悩んだ。テイムズも米国で頑張っているが、最後の最後は、われわれの中での確率論。デスパイネは間違いなく活躍する。日本(前所属のロッテ)でのデータを全部、読み込んで『間違いない』と。ウチに来りゃ間違いなくホームランは増える。打率はもうちょっといいかとも思ったが(笑)、ぜいたくを言っちゃいかん。もうこれだけのホームラン(18日現在、リーグ単独トップの34本塁打)を打っているんだから」

 -テイムズからは撤退した格好だった。

 「さっき話した通りだ。もろもろの事情がある」

 -デスパイネと同じキューバ出身のモイネロは、シーズン途中の育成入団から大車輪だった。

 「いや大きかった。特にキューバから21歳の若者(モイネロ)が来て、なかなか日本での生活になじむのも難しいと思うが、デスパイネが本当によく面倒を見ていて。安心して野球に専念できる。見えないところで彼がサポートしてくれている。それとスペイン語通訳にも感謝している」

 -モイネロにはどの程度の活躍を見込んでいたのか。

 「中南米担当のスカウトの話を聞いて、実際に選手を紹介してもらっていると、すごく…何と言うか『こんなんがうじゃうじゃおるんかい』と(笑)。スアレスもそうだ。(15年オフに)スアレスを取るときに社内で話したことだが、あの年(昨季25歳)の無名の選手にしちゃあ、ちょっとはずんで出した。そうは言っても、日本のドラフト1位とスアレスと、どっちが優秀だと思う? そう聞けば、間違いなくスアレスですよねという話になる。そうだろう、ドラフト1位を無競争で取れたと思ったらいいじゃん、と」

 -そういう位置づけの外国人選手。

 「ドラ1が2人いるようなものだ。モイネロも一緒。そういう風に見ていると、目につく選手はたくさんいる。そういった選手の中で、日本に来てくれる選手で、たまたまタイミングが合った。フッとあの(同様にキューバから育成で獲得したコラスと)2人が浮上して、日本でやってみてもいい、という話だった」

 -5月になって獲得した。

 「スカウトが結構、恐る恐る言ってくるわけだ。一応、一通り、編成が終わって、その後なので。『そんなの別にいいから、取れ取れ』と。日本で野球にチャレンジしてもらって、そこで芽が出たら、しばらくやってもらったらいい。実際、成功している。来年、再来年、ますます楽しみだ」

 -若い外国人選手を獲得する方針は今後も?

 「やっていく。そういう意味ではスカウト力ももっと発揮しなきゃいけない。育成システムの中で、だいぶ網は張ってきているが、まだやっぱり世の中は広いから。いろんな選手がいるだろう」

 -FA市場にはここ3年参戦していないが、かつての方針から転換しているということか。

 「そんなことはない。FAは、常に僕らは真剣に考えて、取りにいく人間は徹底的に取りにいく。去年で言えば対象となる人と、ウチにいる人と比較して、どう考えても、ウチの人間が上だった。金額の問題じゃなく。控えと考えて、ウチの控えと比較しても、やっぱりウチの人間が上」

 -検討した上で欲しい人材がいなかった。

 「それに、ウチの控えは出場機会がないだけで、もし1軍で出続けていたら活躍するんじゃないかという思いがあれば、バックストップ(金融でいう安全装置)としてもいらない、という話。あとは地点、地点で見て、修正して。シーズン途中ならトレードなんかで。少し前になるけど、川島なんて心底、いいトレードだった(2014年7月にヤクルトと2対2でトレード)と思う」

 -開幕時期には電撃的に川崎を獲得した。

 「僕らはダイエーの時代に川崎をドラフトで取ったときから、川崎本人とも、ご家族ともずっとお付き合いを続けている。と言うのは、小川(編成・育成)部長が、ずっと付き合っている。もう何年も前から、そろそろ帰ってくるんじゃないかというウワサはあっただろう。僕らは彼に、常に変わらないスタンスを持ち続けていた。過去に(米国で球団の)枠から外れるというときにも、ウチはどこよりも早く『どうするの?』と聞いていた。今回も同じようにアクセスする中で、彼が、ついに彼が決めた。結局、彼は全部、自分で決める男だから。決めたとなったら早い。じゃあ、こっちもそのスピードに合わせようと。決めたと言うんだったら、じゃあもう、今すぐだと。開幕直前のタイミングで、ちょっとバタバタすぎたが」

 -編成上、必要か否かとは別の判断だったか。

 「そうではない。まず選手としての可能性、チームに対する貢献を見た上で考える。それがメインだ。それがなければ、そこから先はないと僕は思っている。それに加えて、彼の非常に強烈な個性が、アピールと存在感が…。球団に対しても、ファンに対しても、さまざまな形でプラスに作用するじゃないか、と」

 -実際にチームメートも、ファンも歓迎した。

 「どっちかと言うと、ウチは職人肌の選手が多い。自分のパフォーマンスが十分でないと、どうしてもふさぎ込んだり、悔しさが出たりする選手もいる。それもいいんだが、そこで川崎みたいに周りを勇気づける選手がいると、また違ってくる。唯一、あんなにタイムリーに恵まれない(得点圏打率6分9厘)とは思わなかったが(笑)。まあ、そこは本人が一番、悩んでいると思う」

 -川崎に限らず近年、五十嵐、松坂、和田と米大リーグでプレーした選手の獲得を続けてきたが、これは若手の育成と矛盾しないのか。

 「われわれはいつも市場価値の議論をしている。今いる選手に対しても、常に市場価値を大事にしている。例えばFAなら宣言した瞬間に、会社が上場するようなもの。他球団からもオファーができるんだから、そこで価格が形成される。海外組もそう。一度マーケットに出てる選手たちには、みんなもうフェアプライス(適正価格)があるわけだ。僕らは常に、そこに目を置くべき」

 -だとしても若手にはフタをしかねない。

 「そうやって取った選手を、若い選手から見て、想像を超えたネガティブなことはないと思う。むしろ『ああいう選手が来てくれたんだ』となるんじゃないか。取ってきた選手はみんな若くはない、それはある程度、もう活躍している選手だから。若い選手は、そこを冷静に受け止めていると思う。技術をどんどん盗ませてもらったらいい。プロの世界だから、親切に教えてくれはしないとも思うが、学ぶことは多い」

 -今オフの補強方針については。

 「その話は、まだちょっと早いが。補強という点では、李大浩のケースで学んだことがある。自分もソフトバンクの経営陣の一人(本社の専務執行役員財務統括)という立場からすると、あそこは本当に、ついフッと甘くなったなと思う。李大浩が抜けても強いとみんな言っていた。あそこで、もしまた誰か取ったら、恐らく『やっぱり取るんですか』とか言われたとは思う。だが、言われてもあの時、取るべきだった。今年のオフも『今のチームにまだ足りないものは何だろう』と。それは総花的なものではなく、論点を絞って。ピンポイントで、補強にチャレンジができると思う」

 (おわり)

=2017/09/19 西日本スポーツ=

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