達川ヘッド「衣笠さんに言われたんじゃ。柳田に伝えてくれと…」/ソフトBコラム

達川ヘッドコーチ=3月28日撮影
達川ヘッドコーチ=3月28日撮影
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 巧みな語り口が名物の達川光男ヘッドコーチ(62)のコラム「今昔物語」の今季第2弾をお届けします。ホークスは勝率5割で交流戦に突入。ここまでの戦いぶりを登山に例えて振り返ってもらいました。広島の監督時代の苦い思い出。その中で教訓になっていることとは? 今年亡くなった星野仙一氏、衣笠祥雄氏からの心に響いた言葉とは? それでは達川ヘッドの登場です。

 西スポ読者の皆さん、どうも達川です。ホークスファンには心配かけて、すんません。しかし、ワシは、交流戦まで最低5割と思うとった。それをクリアできたのは戦えるいうことじゃ。幸いにも上とはそんなに差がついとらん。あとはやるかやらないかはホークス次第。他のチームは関係ないんじゃ。ということで今回は格言から紹介させてもらいます。

 「辛抱する木に金がなる。正直の頭に神宿る」

 一生懸命、自分に忠実に野球に立ち向かえば、必ずいいことが起きると。昨年日本一のいい思いをしたあとに、今年は一試合一試合、高校野球のようにしびれる試合が続いているわけじゃ。選手はようやってくれとると思うとるよ。

 仏教用語に「攀念智(はんねんち)」という言葉がある。恨みつらみを持つということじゃな。なんで突然そんな話をしたか言うたら「攀念智」の「攀」という言葉に重みがあるんじゃ。先日、若い登山家の栗城史多さんがエベレストでお亡くなりになった。彼が世界の山を登ると、どれも○○登攀(とうはん)と呼ぶ。じゃが、富士山は登攀とは言わない。何でかいうたら、富士山は足だけで登ることができる。じゃから登山という。登攀とはどういうことかいうと、過酷な条件の中で体全体を使って登ることを言うんじゃと。

 これが今のホークスの状況とぴったり重なってのう。昨年は、おととし悔しい思いをしたことで選手が登攀しよったと思うんじゃ。何が何でも、命を落としても勝つんじゃと。今年も選手は同じ気持ちでやってくれとると信じてるけど、ワシ自身がホッとした気持ちで登山しよった気がする。ここは大きく反省しとる。ここからは登攀する気で死に物狂いで頂上を目指したい。まだまだその時間はあると思うとる。

 ワシも1999年、2000年と広島の監督をさせてもろうたけど、00年は主力がバタバタとけがをしてしもうた。野村(謙二郎)、前田(智徳)、江藤(智)、緒方(孝市)…。主力で残ったのは金本(知憲)だけじゃ。大黒柱の佐々岡(真司)もけがじゃった。しかし、試合は待ってくれん。黒田(博樹)、新井(貴浩)、東出(輝裕)と若手が頭角を現してくれた。ワシは成績不振で辞めることになって、その時は非常に苦しかったけど、彼らが後に活躍してくれたことは良かったなと思うとる。若手はチャンスが来たと、ぜひ生かしてほしいのお。

■今の戦力でも十分勝負になる

 当時は戦力もなく、ワシも耐えることを覚えた。勝つことの難しさを味わって、99年には13連敗という球団タイ記録を経験させてもろた。40歳そこそこでまだ若かった。泰然自若いうんか、やはり慌てずに、いかに選手に気持ちよくやってもらうかということを、その時に学んだんじゃ。昨年より厳しい戦いになっとるけど、他の5球団と戦ってみて、今の戦力でも十分勝負になると感じとる。きょうから交流戦。得意得意と言われて、昨年も12勝6敗じゃったけど、星勘定はせずに一つ一つの試合を勝っていくということだけよ。

 ちなみに連敗は黒田が13で止めてくれたんよ。黒田は「雪に耐えて梅花うるわし」という言葉を心の支えにしている。当時は采配で何をしても裏目に出たのを覚えとる。選手を信じてやるのが一番大事だという教訓になっとるんじゃ。その時があるから今こういう状況でも大したことじゃないなと。去年も言うたけども「禍福はあざなえる縄のごとし」「人間万事塞翁(さいおう)が馬」とな。何が災いして何が幸いするかは分からん。後になれば、こういうけが人が続出して大変な年も教訓になるじゃろう。「神は越えられぬ試練は与えない」と、ひとまず中締めをしておこうか。

■故衣笠氏「捕手は怒るな」

 ようやく5月も終わろうかというところじゃが、今年は寂しい別れが続いておる。年明け早々に星野さん、先月は衣笠さんが亡くなった。そして先日、同年代で大ファンだった西城秀樹さんも亡くなった。星野さんの座右の銘は「夢」であり、衣笠さんは「忍耐」じゃった。星野さんは「野球に恋したい」、衣笠さんは「野球が俺のことを好いとる」とおっしゃっていた。これは投手と野手の考え方の違いじゃなかろうか。投手は自分がボールを投げていくから夢がある。野手はいろんなボールに対処しないといけんから忍耐が必要。対照的で興味深い話じゃな。

 衣笠さんには去年の春季キャンプで二つのことを言われたんじゃ。一つ目は「タツ、キャッチャーは怒るなよ。甲斐はいい選手じゃないか。今の選手は怒ると伸びないよ」と。衣笠さんも最初は捕手じゃったけど、怒られすぎて嫌になってやめたんじゃ。キャンプの紅白戦で12盗塁された時も電話をくれてのお。

 二つ目は「柳田はいい選手だな。これだけフルスイングできる選手はいない。現役引退するまで(フルスイングで)やってくれ。そのためにはいいフォームで走りなさい」ということじゃった。衣笠さんの代名詞もフルスイングじゃったから目に留まったんよ。ランニングフォームをしっかりしたら、守備も打撃も良くなる。きっちり腕を振って守備位置まで行くように伝えてくれと。残念ながら遺言になってしもうたけど、本当に野球が好きで、野球に好かれた人じゃった。

 星野さんからは、ホークスのヘッドコーチを受けるときに忘れられん言葉をもろうた。「監督と選手の間に挟まって、困ったら選手側につけよ。どっちにつくかというときに選手につくことができるなら、ヘッドコーチをやりなさい」と。今では大切な遺言となって心に刻んどる。けが人が相次いで、こういうときだからこそ、みんなで力を合わせてやっていけるようなムードをつくりたい。交流戦も厳しい戦いが続くと思うとる。一丸となって、登攀したい。こんなところで、今回はおしまいじゃ。

 (福岡ソフトバンクヘッドコーチ)

=2018/05/29付 西日本スポーツ=

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