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【社説】上がる地価 訪日客の効果を広げたい

 全国の地価の上昇率がバブル期以来の高さとなった。2024年に過去最多となったインバウンド(訪日客)が押し上げ要因の一つである。

 その恩恵は、地方では名の知られた温泉など一部の観光地に偏りがちだ。訪日客効果を面的に広げる取り組みを求めたい。

 国土交通省が発表した25年1月1日時点の公示地価は全国平均で住宅地、商業地、全用途がいずれも4年連続で上昇し、上昇幅は3年連続で拡大した。

 住宅地と商業地の上昇率の上位地点は、大型半導体工場の新増設が進む北海道と熊本県を除けば、外国人でにぎわうリゾート地や観光地がほとんどだ。

 円安の後押しもあって訪日客は増加している。24年の訪日客は推計3687万人、旅行消費額は8兆1395億円となり、いずれも前年の約1・5倍で過去最高だった。東京・浅草や大阪・道頓堀をはじめ、外国人に人気の商業地では地価の高騰が見られる。

 その効果は九州にも及ぶ。観光庁によると、24年の外国人の延べ宿泊数は九州7県ともに前年を上回り、福岡、熊本、大分の3県は過去最多を更新した。

 新型コロナウイルス禍で姿を消したクルーズ船も戻ってきた。24年に福岡市の博多港に寄港したクルーズ船は、5年ぶりに200隻を超えた。今年は昨年を上回るペースで増えている。

 訪日客効果もあって、福岡市中心部の天神や博多、福岡県太宰府市の商業地などは地価の上昇が目立つ。

 九州の温泉地は明暗が分かれた。大分県別府市の平均地価上昇率が拡大した一方で、長崎県雲仙市や鹿児島県指宿市などは全地点がマイナスだった。訪日客効果はまだら模様である。

 政府は30年に訪日客を6千万人、消費額を15兆円に増やす目標を掲げた。さらに多くの観光客を受け入れるには、観光公害と呼ばれる弊害を解消しなければならない。

 京都や富士山、鎌倉といった有名観光地では、ごみのポイ捨て、騒音、渋滞などで住民生活に支障が出ている。

 東京と京都、大阪を結ぶルートに集中しがちな訪日客を他の地方へ、福岡に来た訪日客を九州各地へと分散できるように、誘客に工夫を凝らしたい。

 地価は全体的に上昇傾向だが、人口減少で下げ止まらない地域が少なくない。

 災害の影響も大きい。24年元日の地震で被災した石川県能登半島では、ほとんどの調査地点で下落率が拡大した。20年の熊本豪雨で甚大な被害を受けた熊本県人吉市は下落が続いている。

 一部不通が続くJR肥薩線のうち、鉄路の復旧で基本合意した八代-人吉間の整備を急ぎたい。水害から11年後に運転再開した福島県内のJR只見線は観光資源にもなっている。参考にしたい。