連載「備えは~福岡沖地震」(4)福祉避難所どこにある

西日本新聞

外出するときは酸素ボンベが欠かせない徳永稔さん=福岡県春日市(撮影・軸丸雅訓) 拡大

外出するときは酸素ボンベが欠かせない徳永稔さん=福岡県春日市(撮影・軸丸雅訓)

 「本当に恐ろしかった。身のすくむ思いでした」

 慢性的な呼吸不全を抱える徳永稔さん(85)=福岡県春日市=は、福岡市・天神の百貨店で妻の靖子さん(84)と買い物中に福岡沖地震に見舞われた。

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 外出時、徳永さんは、重さ3キロの酸素ボンベをキャリーバッグに入れてチューブを鼻に入れ、酸素を吸っている。気付いたらショーウインドーにしがみつき、しゃがみ込んでいたという。店内は照明が消えて薄暗く、酸素ボンベを抱えて停止したエスカレーターを5階から駆け下りた。1階に着くと、息苦しくなった。

 10年前は幸い、近くに止めていた自家用車が無事で、大きな渋滞もなく帰宅できた。ただ、交通事情によっては帰宅や避難はままならない。酸素ボンベの残量はもつのか、帰宅しても停電していれば、据え置きの酸素濃縮器が使えない…。不安は尽きない。

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 被災時、徳永さんのような在宅の要援護者の避難先となるのが、市町村が指定する福祉避難所だ。一般の避難所で体調が悪化したり亡くなったりする要援護者が問題となった阪神大震災を教訓に設置され始めた。バリアフリー化された福祉施設や公共施設が多い。

 内閣府によると、状況によっては要援護者が自宅近くの学校や公民館(1次避難所)に避難せず、直接福祉避難所(2次避難所)に向かうケースもあるとみられる。このため、国は福祉避難所の場所を広く住民に周知するよう求めている。

 神戸市や仙台市はホームページで福祉避難所の一覧を公表している。神戸市の担当者は「東日本大震災では、福祉避難所の存在を知らず、最初からあきらめて自宅から避難しなかった高齢者もいた」と、周知の重要性を強調する。

 ところが福岡市は福祉避難所の場所を公表していない。市防災・危機管理課は「福祉避難所は2次的な避難先。事前公表すれば健常者がいきなり来て混乱する恐れもある」と説明する。

 呼吸不全の患者や家族でつくる「呼吸不全友の会」(福岡市)の藤波武昭会長(72)は「福祉避難所が自宅の目の前でも1次避難所まで行くのか。要援護者にはあらかじめ場所を教えてほしい」と求める。

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 国は福祉避難所を小学校区に1カ所程度指定するよう求めている。神戸市は303カ所(小学校数164校)で約1万人の受け入れを想定し、仙台市は101カ所(同124校)で約1300人とみる。福岡市は82カ所(同143校)にとどまり、「受け入れ可能な人数が未報告の施設がある」として、受け入れ数全体を算出できていない。

 そもそも警固断層を震源とする都市直下型地震で、要援護者は何人避難するのか。福岡県は地震によって県内で約2万8600~4万6600人の避難者が出るとみているが、要援護者の内訳を推計していない。

 佐賀大の北川慶子名誉教授(社会福祉学)は「福岡市は当然、福祉避難所の場所を事前公表すべきだ。その趣旨を広く周知すれば、健常者が押しかけてくる心配も減る。本当に必要な人が利用できなければ意味がない」と指摘した。

 (片岡寛)

 

=2015/03/18付 西日本新聞朝刊=

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