連載「備えは~福岡沖地震」(3)手つかずの帰宅支援

西日本新聞

福岡沖地震で福岡市役所前広場に避難した人たち=2005年3月20日午前11時45分 拡大

福岡沖地震で福岡市役所前広場に避難した人たち=2005年3月20日午前11時45分

 大地震で行き場を失い、戸惑う高齢者や外国人を駅員らが筆談しながら誘導していく。昨年11月19日、川崎市のJR川崎駅周辺で帰宅困難者対策の訓練があった。市やJR東日本、警察、地元商店街から約150人が参加した。

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 東日本大震災では首都圏は500万人以上の帰宅困難者であふれた。川崎駅には3千人余りが押し寄せ、混乱した。市はその反省から、2012年9月から1年半がかりで、対策をまとめた。地震に直面する都市部では帰宅困難者対策は欠かせない。

 まず「行動ルール」として行政や警察、商業施設などが取るべき対応を、具体的に時系列で定めた。災害時に水やトイレを提供するコンビニや飲食店約100カ所を「支援ステーション」として市のホームページで公開した。訓練は昨年11月で2回目になる。訓練で浮かび上がった課題の対策を練り、行動ルールをさらに充実させている。

 同時に物資の備蓄施設を整備する際に国の補助金を使える「都市再生安全確保計画」を定めた。この計画は川崎市や札幌市、名古屋市など計8地域が既に講じている。

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 福岡市はどうか。事実上、手つかずと言っていい。市は警固(けご)断層がもたらす地震が起きた際、天神地区とJR博多駅周辺で最大3万8千人が帰宅困難者になると予想する。だが昨年6月に策定した市地域防災計画に盛り込んだ帰宅困難者対策は「事業所や関係機関などと支援体制を確立する」などと、概要を1ページ程度にまとめたにすぎない。

 市防災・危機管理課によると、今年4月以降、官民が参加して開催する協議会で計画策定に向けた議論を始めるという。

 一方、鉄道の耐震化も壁にぶち当たっている。

 西日本鉄道(福岡市)は06年から、警固断層の間近を走る天神大牟田線の耐震化を「最重点項目」と位置付ける。中央区の福岡(天神)駅から南区の大橋駅先までのうち約4・2キロが高架で、約千本の柱の耐震化工事を進めているが、完成は5割にとどまる。

 これまでは高架下が駐車場や駐輪場など工事がしやすい部分を進めてきたが、残る部分はテナントが入っている所も多い。工事のためにテナントが休業せざるを得ないこともあるとみられ、「工事のために関係者の理解が得られなければ、進めるのは難しい」(担当者)のが現状だ。

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 「アジアのビジネス拠点」を目指す福岡市は天神再開発構想に絡み、再開発ビルの容積率を現在の800%から最大1400%まで上乗せを認める方針だ。福岡の都心に新たな民間投資を促す狙いで、地下鉄天神駅と市役所前を接続する地下通路(約120メートル)の整備も進められる予定だ。

 魅力を増す都心には、これまで以上に人が集まるだろう。大地震への備えも急がなくてはならない。福岡市のある幹部は言った。「福岡沖地震を教訓に防災力を向上させていれば、市の魅力として国際的に発信できたはずだが、後回しにしてきた感は否めない」

(伊藤完司)

 

=2015/03/17付 西日本新聞朝刊=

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