連載「備えは~福岡沖地震」(2)木造住宅4割が耐震工事必要

西日本新聞

壁に耐震パネルが組み込まれた吉川さん宅=2月末、福岡県大野城市 拡大

壁に耐震パネルが組み込まれた吉川さん宅=2月末、福岡県大野城市

 壁をはがし、耐震パネルに張り替えていく。福岡県大野城市乙金の、福岡都市圏を見下ろす高台にある住宅で2月末、耐震工事が行われていた。1976年築の木造2階建てだ。家主で会社員の吉川俊幸さん(64)は10年前、自宅のトイレ内で福岡沖地震を体験した。「家が倒れるのではないかと怖かったです」

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 地震後、市が各戸に配った「揺れやすさマップ」を見ると、陸側の警固断層が動くと福岡沖地震を上回る最大6強の揺れ、とあった。そのことがずっと頭に引っかかっていた。

 昨秋、市の広報誌で耐震化の説明会があることを知った。直後に耐震診断をしたところ、震度6強から7に達する大規模地震に対し「倒壊の可能性が高い」との評価だった。市の補助金が最大60万円支給されることも分かった。

 吉川さんの判断はこうだった。「かなりの自己負担も必要。年齢を重ね、高台の暮らしがきつくなると都市部への引っ越しもあり得る。リフォームのように耐震化で外観が良くなるわけでもない。だけど、命を守ることを最優先した」

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 福岡県によると、県内の木造住宅で1981年5月以前の「旧耐震基準」の頃に建築され、耐震工事が必要なのは2008年時点で、木造住宅全体の39・6%、約35万戸に上る。

 81年6月に新基準に改まり、壁を強化することで大規模地震でも倒壊は免れる強さが求められるようになった。このため自治体は、旧基準住宅に限って耐震工事補助(自治体ごとで上限額が30万~70万円などと異なる)を出している。

 だが福岡県内では、補助金の利用は13年度で122戸にとどまる。南海トラフ地震に備える高知県が695戸だったのと比べると、格段に少ない。

 警固断層がもたらすとされる地震と同じ都市直下型だった阪神大震災は6400人を超える死者を出したが、死因の8割超が建物倒壊による圧死だった。

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 耐震工事を担う建築会社でつくる福岡市耐震推進協議会によると、さらに問題なのは「新基準で建てられた住宅でも倒壊の恐れがある」ということだ。

 協議会会長の白水秀一さん(51)はこれまで、約千戸に及ぶ耐震診断に携わった。新基準に該当する物件が150~200戸含まれていたが、約75%が評点「1・0」を下回り、耐震工事が必要との結果だった。

 福岡市のある1級建築士は「建築費が上がるためか現場で新基準が徹底されていない」とみる。行政の確認も不十分だったようだ。

 評点「1・06」。

 福岡市中央区今泉の、新基準で建てられた木造2階建てに暮らす山崎卓さん(80)が実施した耐震診断の結果だ。ぎりぎり「1・0」を超えたが、福岡沖地震ではたんすが倒れ、寝ていれば下敷きになっていた。二度と怖い目に遭いたくないと耐震工事に踏み切った。約150万円かかった。新基準物件なので補助金は出ない。「保険のようなもの、と割り切りました。今は安心しています」。山崎さんは笑みを浮かべた。

 (竹次稔)

 

=2015/03/16付 西日本新聞朝刊=

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