<2>街を見守る豚骨発祥の店 南京千両(福岡県久留米市)

西日本新聞

伝統の味を守り続ける宮本チエ子さんと宝委さん親子 拡大

伝統の味を守り続ける宮本チエ子さんと宝委さん親子

福岡県久留米市東町の明治通り、熊本銀行久留米支店前。ラーメン500円、とんこつご飯200円。午後7時半~午前4時ごろ。定休日は日曜、雨天時。店舗=0942(37)7279。

 平日の夜だったからか、繁華街はどこかしら寂しかった。西鉄久留米駅(福岡県久留米市)から、アーケード商店街に並走する目抜き通り「明治通り」に出る。1軒の屋台が街灯に照らされていた。白いのれんには「創業昭和12年」とある。ここが九州の豚骨ラーメン発祥とされる「南京千両」だ。

 宮本チエ子さん(74)と宝委(たかとも)さん(39)親子が切り盛りする店内は、通りとは対照的に満員のにぎわいだった。赤ら顔の酔客、仕事帰りのOL…。もちろん目当てはラーメン。うまい。意外にあっさり-。店内に響きわたる声につられるように注文した。「1杯お願いします」

 宝委さんがどんぶりにスープを注ぐ。手際よく麺を湯切りして、ノリとメンマ、細く刻んだチャーシューを載せる。目の前に置かれたどんぶりを持ち上げ、スープをすすった。久留米といえば濃厚豚骨が相場だが、透明感を残しつつ、茶色がかったスープは本当にあっさり。チエ子さんは「ラードも使ってませんから」。自家製という太めの縮れ麺とよく絡む。豚骨しょうゆ風味の中華そばといった感じだ。

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 「南京千両」を創業したのはチエ子さんの義父、宮本時男さん(故人)。昭和の初め頃「たぬき」という屋号のうどん屋台を引いていたが、弟から「横浜の南京街(現在の中華街)で中華そばが流行している」と聞き、現地で作り方を学んだ。出身地である長崎のちゃんぽんも参考にして純豚骨スープを考案し、メニューに加えた。

 その年、日本陸軍が中華民国(当時)の首都、南京を占領した。陸軍の師団司令部があった軍都・久留米は沸き、屋台の屋号も「南京千両」に。チエ子さんは「時代が時代でしたからね」。今は“千両”に縁起が良いという意味を込めている。

 珍しかった豚骨ラーメンはすぐに人気となった。当初は同市日吉町で営業。50年前、チエ子さんが時男さんの長男、憲司さん(74)に嫁いだ頃には現在の場所に移っていた。

 今は市内に同じ屋号の店舗も構えている。だが「屋台をずっと残してほしい」というお客さんの声は根強い。

 久留米の街はゴム産業で栄えた時代を経て、今は多くの地方都市がそうであるように、少し沈んだムードが漂う。「ちょっと寂しくなったけど、3世代で守り継いだ味。4世代にわたって来てくれるお客さんのためにも続けます」。これからも久留米の街を見守り続けるのだろう、そう思いながらどんぶりを置いた。

 (小川祥平)

=2014/09/18付 西日本新聞朝刊=

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