<6>鶏がらで作る渾身の一杯 麺道はなもこし(福岡市中央区)

西日本新聞

厨房で鶏だしラーメンを盛りつける広畑典大さん。チャーシューも鶏肉を使う 拡大

厨房で鶏だしラーメンを盛りつける広畑典大さん。チャーシューも鶏肉を使う

福岡市中央区薬院2の4の35。特製鶏だしラーメン850円、特製鶏とろつけそば900円。昼は午前11時45分~午後2時、夜は同7時~同10時(売り切れ次第終了)。日曜定休。092(716)0661(接客中は応答できない場合あり)。

 「僕の店なので人に任せたくないんです」。麺道はなもこしの店主、広畑典大(のりひろ)さん(38)はとにかくストイックだ。仕込み、製麺、接客、掃除まで全てを1人でこなす。取材中もスープをかき混ぜにいったり、製麺機をのぞいたりと慌ただしい。それでも作れるのは多くても1日40杯。「味を落とさずに提供できるのはこれが限界です」

 渾身(こんしん)の一杯は豚骨は使わず、九州では珍しい鶏(とり)がらだけで勝負する。主なメニューは、冷やした麺を温かいつけ汁で食べる「鶏とろつけそば」と「鶏だしラーメン」の二つ。

 まずはつけそばを頼んだ。全粒粉を使った太めの麺はつややかな見た目。「最初はユズごしょうと塩で」という広畑さんに従ってひと口すすった。弾力ある麺はかむたびに小麦の風味が広がる。次はつけ汁に浸す。濃厚な鶏のうまみがぐいぐいと主張する。それでいて鶏特有のえぐみはなく後味はすっきりしているのが驚きだ。魚介スープで割った鶏だしラーメンも鶏の濃厚さが際立つ。その理由は「大量の鶏がらを煮出すから。仕入れ先からも驚かれるほどの量です」と言う。

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 15年ほど前、福岡市内で鶏料理の居酒屋を始めた。好きな音楽をかけ、好きな料理と酒を出す。そんな店だった。しかし繁盛するにつれ違和感も芽生えてきた。「好きなことをやろうとして始めた店なのに、お客さんに合わせないといけない部分が増えてきて」

 リセットしよう-。背中を押したのは東日本大震災で感じた人生観の変化だ。「金銭的な援助だけでなく、おいしいものを食べて喜んでもらうことも誰かの支援になりうる。店を増やしてお金を稼ぐのも良いけど、それは他の人がやればいい。僕は何か一つの料理を極めたいと思うようになった」。ちょうどその頃、ラーメンをメニューに加えていた。製麺機を購入して作った麺と、水炊きをさらに濃厚にしたスープ。「他の店で食べたことがないおいしさ」と自賛する抜群の出来だった。2011年7月、居酒屋をたたみ、3カ月後に「一から十まで1人で出来る」とラーメン専門店として再出発した。

 「豚骨じゃないのか」「硬麺はないのか」。開店直後、豚骨主流の福岡での苦労は絶えなかった。それでもスープや麺の研究を重ね、開店前に行列ができる人気店となった。「『先代の味を守らないかん』とか僕にはないですから」と今でも味の改良に取り組んでいる。

 売り上げには限度があり、居酒屋時代に比べると経済的に苦しい。それでも「おいしいものを食べて喜んでもらえる達成感ですかね。めちゃくちゃ楽しいです」。ストイックな表情が一気に緩んだ。 (小川祥平)

=2014/12/04付 西日本新聞朝刊=

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