<12>締めに最適、ルーツは台湾 のり一(鹿児島市)

西日本新聞

深夜でも客足が絶えない店内で笑顔を浮かべる神川照子さん 拡大

深夜でも客足が絶えない店内で笑顔を浮かべる神川照子さん

鹿児島市山之口町9の3。ラーメン400円(午後8時以降は500円)、おにぎり50円。午前11時半~翌午前3時。定休日は日曜。099(222)4497。

 飲み屋が密集する鹿児島市中心部の「文化通り」。その近くにある「のり一」は鹿児島ラーメンの草分け的存在の店だ。オーナーの神川(かみかわ)照子さん(80)に取材を申し込んだところ快く引き受けてくれたが、待ち合わせ時間に驚いた。「夜11時に来てくださいますか」

 雨が降りしきる週末の夜、歓楽街の一角にある店は道にまで行列があふれ出していた。店内に入ると赤ら顔のサラリーマン、カップル、若者などで大にぎわい。時間的に締めの一杯だろうか、みんなおいしそうに麺をすすっている。そんな中、神川さんは客の誘導や配膳でせわしく動き回っていた。毎日、夜10時ごろに店に出勤して未明まで働いているという。「ここは夜の街ですから。まったく苦になりませんよ」

 創業は戦後間もない1949年。現在店舗がある場所に土地建物を買ったものの活用していなかった神川さんの夫、松一さん(故人)が、台湾人の親類から「中華そばでもやったらどうか」と勧められたのがきっかけだという。親類が教えてくれたのは、鶏がらをメーンに使ったあっさりスープが特徴の麺料理。松一さんはそのレシピを学びつつ、研究を重ねて今の味へ近づけていった。59年に松一さんと結婚し、店に立つようになった照子さんは言う。「うちは台湾の味なんですよ」

    □   □

 鹿児島市で初めてのラーメン店は47年創業の「のぼる屋」(昨年閉店)。同店は中国人から教えてもらったのが味の起源だった。2年遅れてオープンした「のり一」、その翌年開業の「こむらさき」は台湾の味。鹿児島は九州のご当地ラーメンで唯一、久留米や博多の影響を受けていないと言われるが、その理由が分かる気がした。

 配膳された一杯。豚骨を若干加えているという鶏がらスープは透明感にあふれ、丼の絵柄まではっきりと見える。一口すすると見た目に違わずあっさり。優しい鶏がらのだしが舌を包み込むようでしみじみうまい。モヤシとともに添えられた揚げネギの香ばしさがアクセントにもなっている。「寝る前にこってりしたのは食べたくないでしょ。髄を出さないように1日3回ほど骨を入れ替えます。和食も一番だし。そんな感覚です」。まさに“締め”に最適だ。

 創業当初は昼だけの営業だった。周辺に飲み屋が増えていくのに合わせるかのように夜の店へと変貌を遂げた。「お客さんと話すのが楽しいですから。まだ10年は頑張りますよ」。そう言って照子さんは笑った。

 午前0時すぎ、余韻に浸りながら店を出ると、まだ行列が続いていた。 (小川祥平)

=2015/03/19付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ