[2015年]【地方議員とカネ~オフレコ話】(3)秘書稼業の志とため息

西日本新聞

議員秘書の名刺を差し出すと、政治とカネをめぐり、厳しい言葉を浴びせられることも少なくないという(写真の一部を加工しています) 拡大

議員秘書の名刺を差し出すと、政治とカネをめぐり、厳しい言葉を浴びせられることも少なくないという(写真の一部を加工しています)

 九州有数の農業地帯。プレハブの古びた事務所を訪ねた。40代の男性は、地方議員の秘書歴二十数年。政治とカネに話を向けると、男性はすごんだ。「金のためなら、やっとられんよ、この稼業は」

 プルルル。秘書の携帯が鳴った。支持者からだ。指定の店に駆け付けると、なじみの顔ばかりが待ち構えていた。「待っとったよ。これで、割り勘の頭数が増えた」と迎えられる。ぐっとこらえ、お酌して回る。支持者の輪に、決まって割り勘分以上の金を置いて帰る旧知の議員の姿もあった。例えば1人3千円でも、万札を2、3枚。警察にばれないかと、いつもハラハラさせられる。

 プルルル。「うちのそばに、タヌキの掘った穴がある。どうにかしてくれんか」。業者を手配し、穴を埋めるよう指示する。支払いは、事務所持ち。もちろん、公金から支給される政務活動費は充てられない。どう議員に説明しようかと頭を抱える。

 秘書の携帯は、いわゆる「ガラケー」だ。一度はスマートフォンにしたが、昼夜の電話対応でバッテリーがすぐに切れるので、買い直した。「どうせ秘書なんて、小間使いか、便利屋と思われている。有名人、金持ち、世襲しか政治家になれないのも、おかしいと思わんですか?」

 いずれは政治家に-。夢を抱いて飛び込んだが、月収は手取り20万円台。妻のパート収入や実家の支援でしのいでいる秘書仲間も少なくない。

 「議員秘書なら、金回りいいだろう。悪いことして」。名刺を差し出した相手の悪気のない言葉に、いら立ちを覚える。この先ずっと、世間の冷ややかな視線を浴び続けるのか。一時、実家のある選挙区からの出馬も考えたが、「もう、どうでもよくなってきた」。

 地方政治の現場では、人材枯渇の懸念が広がる。12日投開票の道府県議選。九州7県の候補者数は、過去最少の491人にとどまった。146選挙区中、無投票は59選挙区に上った。

 長崎県内の男性市議は、「オフレコが条件なら」と電話取材に応じた。

 「祝儀や香典は、金額は言われんばってん、世話になった人には、それなりの額は出します」。義理を欠かせば、選挙に直結するという。

 「ここだけの話、議員は金を出してくれると思っている人たちがいるわけですよ」。有権者にも責任があると言外ににおわす。そのまま聞き流していいのか。政治に絡むカネの問題は、国も地方も根が深い。

 有権者に酒食を振る舞うこともあるか-。質問をぶつけると、市議は声色を変えた。「そこは…。この話は、これ以上したくない」。電話は切れた。

=2015/04/09付 西日本新聞朝刊=

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