【生きる 働く 第5部】LGBT 自分らしく<5完>「市場」超えて理解を

西日本新聞

ヒルトン福岡シーホークで開かれた勉強会で、LGBT当事者にどう接客するかを話し合うスタッフ=3月、福岡市 拡大

ヒルトン福岡シーホークで開かれた勉強会で、LGBT当事者にどう接客するかを話し合うスタッフ=3月、福岡市

 「LGBT(性的少数者)は人口の約5%。左利きの人や、AB型の人と同じくらいの割合です。当然、お客さんの中にも当事者はたくさんいます」

 3月末、福岡市のホテル、ヒルトン福岡シーホーク。同市でLGBTの情報発信などに取り組むNPO法人「Rainbow Soup」の理事長、小嵒(こいわ)ローマさん(41)は、ホテルのスタッフ約50人に語りかけた。

 同ホテルはこの日、LGBTの勉強会を初めて開いた。基礎知識を学んだ後はグループに分かれ、具体例を想定して議論した。(1)同性2人連れがダブルルームを予約している(2)同性カップルからレストランで記念日を祝いたいとの申し出があった(3)トランスジェンダーが大浴場の利用を希望した-などの例だ。

 LGBTの法務支援に携わる行政書士の中橋優さん(40)=北九州市=は、小嵒さんと一緒に講師として参加した。中橋さんによると(1)は実例で、ホテル側は「ツインへ変更できますよ」と案内してしまったという。「ささいな言動でもLGBTへの理解がないと思われると客は離れてしまう」。この場合、通常通りダブルルームを予約していることを確認すればよいのでは、などの意見が出た。

 ヒルトンは世界展開するホテルチェーン。米国ではLGBT向けのウェブサイトを設けるなどキャンペーンを展開しているが、国内ではそうした動きはなかった。東京ディズニーリゾートや京都の寺院など、国内でも同性の結婚式を行う会場が増える中、同ホテルのマーケティングマネジャー、西出裕加子さんは「当初はうちも結婚プランを提案してはどうかと考えた」と振り返る。LGBTについて学んだ上で、サービスの内容を考えようと勉強会を企画した。

 会には予想の倍の人数が参加した。反響も大きく、県外のホテルでもやりたいとの声が寄せられた。西出さんは「LGBTといっても多様で、価値観も要望もさまざまだと分かった。押しつけるのではなく、応援しますよという姿勢を伝えたいと思った」という。「LGBT結婚フェア」などと打ち出す代わりに、結婚式プランの案内カードに、多様な性への共感を示す虹色のデザインをさりげなくあしらった。今後も勉強会を続け、LGBTの接客ガイドライン作成も検討しているという。

 同市のホテル、福岡サンパレスは2月に「LGBTハピネスプラン」を作った。当事者支援団体を窓口に広報している。担当プランナーの白石玲子さん(54)は「もともと希望があれば同性同士の結婚式もOKだった。プランがあった方が利用しやすくなると考えた」と話す。

 LGBT市場-。

 最近、ビジネス誌などで取り上げられている言葉だ。少子化などで国内消費が先細りする中、企業が新たな市場としてLGBTに注目している。

 電通が4月に行った調査によると、LGBT市場規模は5兆9400億円。子どもがいない同性カップルは可処分所得が多いとの指摘や、外食や旅行、衣料品などへの支出が非当事者に比べ多いとの調査結果もある。

 企業向けLGBT研修を行うNPO法人虹色ダイバーシティ(大阪市)は昨年約100件の研修を行ったが、今年は既に70件を超えた。村木真紀代表(40)は「企業と当事者の接点が生まれるのはいいこと」と歓迎する。LGBTをターゲットに商品やサービスを展開する企業は、必然的に、従業員の福利厚生も問われることになる。

 ただ、LGBTといっても富裕層もいれば、転職を繰り返したり、精神に不調を来し働けなかったりする人もいる。恋愛感情を抱かない人、性別を決められたくない人などセクシュアリティー(性のありよう)もさまざまだ。村木さんは「現状や課題をしっかり理解した上で、当事者に寄り添い取り組んでほしい」と強調する。「市場」の視点が一歩先に進み、理解が広まってほしい。

 =おわり


=2015/05/23付 西日本新聞朝刊=

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