博多ロック編<246>現在進行形として

西日本新聞

博多のロック本2冊 拡大

博多のロック本2冊

 1970年代からの博多ロックシーンを知る2冊の本がある。YAMPO著『菊の花道』(2005年、書肆侃侃房刊)とMARU著『博多とロック』(06年、同)である。ミュージシャン自体の書き下ろし、語り下ろしの本がいくつもあるが、この2冊は外部からの視線だ。

 『菊の花道』は「サンハウス」のボーカル、菊こと柴山俊之にささげた本である。柴山の横で同時代に呼吸した著者の回想記だ。

 『博多とロック』は二回りも違う女性ライターが「サンハウス」「モッズ」「ルースターズ」など博多を代表するロッカー一人一人に「ロックな人生」を聞いたインタビュー集だ。写真も撮り下ろしている。

 80年前後の博多ロックと言えばノスタルジーとして語られることも少なくない。その中で『博多とロック』は歴史化する作業ではなく生き続けるロック、現在進行形のロックに焦点をあてている。著者はあとがきに次のように書いている。

 「昔の写真は一切使用せず、歴史的な要素も深くは追求しなかった。どんな思いで音楽をやってきたのか。そしてこれから、どう生きていくのか」

 個性的、悪く言えばクセのあるロッカーたちがある意味、素直に、熱く語っているのは「昔話」ではなく、継続して活動する現在の自分を描こうとする取材姿勢に対する共感に違いない。

 ×    ×

 MARUは山口市生まれで、福岡の短大へ進学した。音楽のライブが好きでライブハウスをよくのぞいた。

 「かっこいいバンドがいるな」

 それが「シーナ&ロケッツ」であり、「モッズ」であり、山部善次郎などであった。

 「上の世代が伝説のように語るバンドは私にとってはリアルタイムのバンドでした」

 伝説としてのバンド、郷愁としてのバンドではなく、活動中の現役のバンドとして目の前に出現した。著者にとっては新鮮な出会いだった。

 「こうしたギャップを埋めるためにインタビューをしたいと思ったのがきっかけでした」

 多くのロッカーは博多を離れ、東京を拠点にして活動していた。福岡-東京
を往復したり、友人のマンションを借りたりしてインタビューを進めた。

 「ロックにそれほど詳しいわけではなかったが、それが逆によかったかもしれません」

 2年近い歳月をかけた果実が『博多とロック』である。本を書きあげて「やり上げた」という達成感を後にして上京する。博多のロッカーたちの継続性を自分の中に移し替えて、フリーのライターの道を歩んでいる。

 =敬称略

 (田代俊一郎)


=2015/05/25付 西日本新聞夕刊=

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