【発達障害 働くために】企業の理解・配慮で成果

西日本新聞

「困っていることはない?」。発達障害のある男性の様子を気に掛ける光安孝一さん 拡大

「困っていることはない?」。発達障害のある男性の様子を気に掛ける光安孝一さん

 ■生きる働く■ 
 倉庫内の棚には、企業などへ発送する事務用品や日用雑貨約2万種類がずらりと並ぶ。丁寧、かつ手早く商品を補充していく直樹さん(23)には、学習障害(LD)がある。

 物流会社ビゼックス(東京)の福岡物流バラセンター(福岡県粕屋町、従業員約280人)では、直樹さんのような発達障害者を含む障害者26人が、健常者とほぼ同じ業務を担う。直樹さんは昨年、福岡市の大学を卒業し、契約社員として入社。「言葉で説明するのが苦手でストレスをためやすい性格」に配慮してもらえるよう、障害者雇用枠を選んだ。

 民間企業には障害者雇用促進法で、従業員数の2%の障害者を雇う義務がある。同センターは4年前から採用を始め、約9%まで増やした。担当係長の坂井博基さん(37)は「どんな仕事を任せられるのか、初めは想像できなかった」と振り返る。特別支援学校の職場実習を受け入れるなどして、障害者も働きやすい環境を整えてきた。

 例えば、連絡ノート。日々の健康状態や仕事内容を本人が報告し、家族の記入欄もある。不調や悩みを見逃さない工夫だ。直樹さんも「何かあればすぐ相談できるので安心」と話す。入社直後は月50件もあったミスが半年で約10件に。その後ほとんどなくなり、新たな仕事を任された。

 坂井さんは「他の障害者もミスが少なく、作業スピードが速い」と評価。労働人口が減り、人材確保が難しくなる将来を見据え「障害者を雇わない理由はない」と語った。

    ■   ■

 福岡市東区の福祉用具レンタル事業「エヴァ」(従業員65人)は昨年5月、アスペルガー症候群の男性(42)を契約社員で採用した。発達障害者の雇用は初めてだった。

 成人後に障害が分かった男性は「適当に」と指示されると、どうすればいいか分からない。前の職場では、細かい質問を繰り返し「自分で考えろ」と突き放されたという。

 そんな男性を、総務課長の光安孝一さん(45)が中心となってサポートしている。管理職に発達障害に関する資料を事前配布し、男性とは毎日、日誌をやりとりする。介護ベッドの洗浄・点検を担う男性のため、部品や道具などの置き場所は一目で分かるようテープに書いて貼った。男性は「質問に答えがあり、作業しやすい環境も整えてもらい、働きやすい」。作業効率は日増しに上がっている。

 男性の就職は、福岡市障がい者就労支援センターのジョブコーチ佐藤由加里さん(49)が橋渡しした。発達障害者の教育や就労などの支援の軸となる市発達障がい者支援センター「ゆうゆうセンター」と連携して約5年間、支えてきた。男性にとって「悩みを打ち明けられる数少ない存在」で、受け入れ企業の不安や相談にも対応する。佐藤さんは「発達障害の人は千差万別。企業は特性を理解し、それぞれに合わせた配慮をしてほしい」と話す。

 男性を受け入れて1年、エヴァの光安さんは強調した。「発達障害の人に配慮したことで、新入社員や心の病がある人など、誰もが働きやすい職場になった」


=2015/05/28付 西日本新聞朝刊=

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