【和食力】だし 心身を育む 落ち着きに効果? 研究進む

西日本新聞

高取保育園の給食。だしの効いたみそ汁やおかず、玄米、納豆などが並ぶ 拡大

高取保育園の給食。だしの効いたみそ汁やおかず、玄米、納豆などが並ぶ

 「○○ちゃんはご飯が大好きなんだよ。いつも山盛り」。配膳された給食を前に年長組の男の子がズボンをつかみ、人懐こく話し掛けてきた。机の上にはみそ汁、焼き魚などが並ぶ。

 福岡市早良区の住宅街にある高取保育園(213人)。西福江園長(85)が保育士を経て1968年に開園して以来、食にこだわり、和食中心の給食を提供してきた。みそ汁はいりこだしが基本。カルシウムを取れるよう粉末にして入れる。この日の具材はキャベツ、豆腐、油揚げ。主食は雑穀入りの玄米。毎日欠かさない納豆は日替わりの食材を混ぜる。この日は切り干し大根、しらす干し、ゴマなど。副菜のコンニャクのいり煮は野菜やエノキタケのだしが効いておいしい。

 「子どもたちが元気な上に落ち着いている。自然な感じは、訓練ではなく食による影響だと感じざるを得ない」。農業を通して子育て支援に関わる新潟市の農業、高塚俊郎さん(44)は感心しきりだ。農業体験学習事業を進める同市の視察メンバーとして来園した。

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 和食の健康効果は世界的に関心を集めるが、科学的な証明は進んでいない。日本病態栄養学会は今年1月、科学的証明の蓄積を京都和食宣言で呼び掛けた。和食の無形文化遺産の登録がきっかけだ。

 かつおだしについて、味の素イノベーション研究所(川崎市)は疲労改善、高血圧抑制などのほか、満腹感の促進や心の落ち着きをもたらす効果があることを報告している。

 食にもたらす影響は、胃の運動を促進すると同時に、胃から食べ物が出ていくのが遅くなるのを確認した。タンパク質分解に有利となり、腹持ちも良くなることを示唆する結果だ。唾液の分泌も促進された。

 ネズミの攻撃性と不安感が、だしによってどう変わるかも興味深い。飼育箱の中に後から入れられた別のネズミを追い出そうとする回数と長さを比較。だしを4週間与えたネズミ群の平均は10分間で0・7回だったのに対して、だしの代わりに水を与えた群は3回。時間も2秒に対して17・5秒だった。

 不安感は、四角い箱に放り込んだネズミの行動で調べた。ネズミは壁側を好み、徐々に中央エリアへ移動する傾向がある。5分間の行動量は変わらないが、だしを16日間飲ませたネズミは中央に動く量、時間が約2・5倍増えたという。

 「かつおだしが攻撃性を低下させ不安を抑制したと推測される。根底には満足感や心の落ち着きがあるとみられる」。研究所主席研究員の近藤高史さん(53)が説明する。ただ、かつおだしのどんな成分が作用するのかなどはまだ分かっておらず、研究が広がって解明につながることを期待しているという。

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 だしを「おいしい」と感じる仕組みも重要だ。ネズミによる実験では、何度もだしを口にすることで好きになることが分かった。食体験によって心身の効果を実感し、心地よさが繰り返されることによって好きという感覚を得るわけだ。

 高取保育園でもだしの効いた和食を日々、口にする子どもたちが「和食好き」になる。乳幼児に見られるかみつきも減るという。他園で勤務したこともある栄養士の女性は「切り干し、ヒジキなど子どもにとっては味が分かりづらい副菜が多いにもかかわらず、残食が少ない」と話す。

 和食を口にする心地よい感覚が、さらに和食を好きにさせる。食育が大切なゆえんである。

 「食は命なり」。子どもたちの心と体を半世紀以上にわたって育んできた西園長の信念にうなずく。

 【ワードBOX】京都和食宣言

 日本病態栄養学会が今年1月、京都市での集会で採択。(1)わが国における食を評価する(2)和食の優れた点を見直す(3)和食に関するエビデンス(証拠)の蓄積を進める(4)健康に資する和食を次世代に継承する‐を呼び掛けた。


=2015/06/03付 西日本新聞朝刊=

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