障害者雇用 人材育成は 支援 能力に応じて 「任せる」ことで成長も

西日本新聞

 ■生きる働く■ 
 民間企業で働く障害者は年々増え、全国で43万人を超える。身体障害者が7割以上を占める一方で、知的、精神障害者は企業の理解不足もあり、なお就労の機会は限られている。障害者7人が働く「西鉄ウィルアクト」(福岡市)を訪ね、人材育成のあり方を探った。

 企業は法で障害者を雇用する義務(従業員の原則2・0%以上)がある。厚生労働省によると、達成している企業は44・7%(2014年)にとどまり、国は「特例子会社制度」などで後押ししている。

 特例子会社とは、企業が障害者を受け入れるため、一定要件の下に設ける子会社のこと。障害者は親会社の雇用とみなされる。全国に391社(同年)あり、西鉄ウィルアクトもその一つだ。

 同社は11年、西日本鉄道(同市)が設立した。従業員10人のうち知的、精神障害者が各3人、聴覚障害者が1人。西鉄グループ内外のデータ入力などの事務作業から清掃まで、幅広い業務を受託している。

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 設立当初から人材育成を担当する業務課マネージャーの楽満(らくみつ)慶子さん(51)は「企業である以上、『障害者だからしょうがない』と言われるような仕事はしない。どの企業でも通用する社会人に成長してほしい」と考えている。障害者福祉に携わった経験はなく、手探りで指導してきた。

 作業能力の高いAさんはアスペルガー症候群。時間にルーズな面があり、朝の掃除当番にたびたび遅れていた。目覚まし時計を増やしたり、電車の時間を早めたりするよう指導されても、改善できなかった。

 「遅れるのはマイペースで動いているからで、遅れること自体は障害の特性ではなく改善できるものと思う」。楽満さんは、Aさん自身が時間を守る大切さに気付くことが必要と考え、事務所の鍵を預けることにした。

 Aさんが鍵を開けないと誰も中に入れない。楽満さんは玄関前で、あえて待ちくたびれた表情を浮かべた。「他の人を見たら『すみません』と思った。大事なものを任されたのだから、目覚ましを2個にした」とAさん。掃除5分前に出社するようになり、鍵当番を外れた今も遅れることはなくなった。

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 楽満さんは業務でも自ら考えることを促すために、マニュアルを与えるのではなく各自で作るよう指示。それぞれの体調や作業状況を見ながら仕事を割り振っている。「障害者だからといって特別な指導はしていない。分からないことを教え、信頼して任せる。どの会社でもできることだ」

 精神障害者の就労支援などに取り組む「パークサイドこどものこころクリニック」(同市)の院長原田剛志さん(46)は、障害者の人材育成は「通常の新人教育と一緒」と話す。「障害者を『守るべき人』と捉えて過剰に手を差し伸べるのではなく、少し手のかかる新人のように、能力に応じてサポートすればいい」。それが一人一人を成長させ、働きがいにつながると指摘した。 


=2015/06/11付 西日本新聞朝刊=

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