子宮頸がんワクチン 勧奨中止2年 長引く「副作用」 国の支援なく 「救済策を」患者ら訴え

西日本新聞

子宮頸がんワクチン接種後の健康被害に対する公的支援を訴える梅本邦子さん 拡大

子宮頸がんワクチン接種後の健康被害に対する公的支援を訴える梅本邦子さん

 子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に全身の痛みやしびれを訴える報告が相次いだため、国が積極的に接種を勧めることを中断してから今月で丸2年が経過した。副作用の追跡調査や健康被害への救済など国の対応が遅れる中、長引く「副作用」に苦しむ患者をどう支援するか、態勢の整備が急務となっている。

 北九州市の会社員梅本邦子さん(45)の長女(17)=当時高校2年=は昨年11月、朝、ベッドから起き上がってこなかった。めまいや頭痛、吐き気がするという。前日に風邪をひき、病院で注射を打っていた。2、3日学校を休んでも、1週間過ぎても気分はよくならない。「いつまでもサボってないで、起きてきなさい」と娘を責める一方、次第に不安になっていった。

 子宮頸がんワクチンは3回接種しないと効果がないとされる。長女は中3の10月と12月に任意で、定期接種となった高1の5月に3回目を接種していた。3回目の接種から3日後に左足の付け根の痛みがあり病院に行ったが原因は分からなかった。ワクチン接種後の健康被害を訴える患者や家族のブログを見ると、接種から時間が経過してから不調が起きることも多いことを知った。「もしかして…」。ワクチンの副作用を疑うようになった。

 これまで、内科、婦人科など複数の診療科を巡ってきた。大学病院も受診したが、体調不良の原因はいまだに分からない。山口県内の病院に2週間に1回通院し、痛みを抑える薬を処方してもらっている。それでも長女の症状は回復せず、今春、通っていた県立高校を中退した。

 「将来への希望に満ちあふれるはずの時期に娘は苦しんでいる。体調不良とワクチン接種との因果関係を、専門家でない私たちが立証するなんて無理。このまま泣き寝入りするしかないんでしょうか」。この半年間、梅本さんの心が晴れることはない。

    §   §

 子宮頸がんワクチンの接種は、2010年秋ごろに各地で始まった自治体の公費助成で広がり、13年4月からは小学6年から高校1年相当の女子に対し、予防接種法に基づく定期接種になった。しかし、副作用を訴える声が相次いだため、厚生労働省はわずか2カ月後の同年6月、全国の自治体に対し、ワクチン接種の「積極的な勧奨」を一時中止するよう勧告した。積極的な勧奨とは、広報誌で呼び掛けたり、接種を促すはがきを各家庭に送ったりする行為だ。

 ただ、厚労省の有識者検討会は「定期接種を中止するほどのリスクは高くないが、安全性について国民に必要十分な説明ができる状態にない」として、リスクがあることを理解してもらって接種を受ける機会は残した。希望者は今も接種している。厚生労働省によると、これまで約338万人が接種し、うち約2500人が全身のしびれなどの副作用を訴えている。

 厚労省は昨年10月から、副作用が疑われる約2500人の症例全ての追跡調査を実施中。結果がまとまれば再び接種を勧めるかどうかの議論を開始することにしているが「時期の見通しは立っていない」(結核感染症課)。また、法に基づく定期接種で健康被害が出た場合は治療費などを補償する制度があり、これまで厚労省の認定審査会に14人が給付を申請したが、全員審査中で救済された例はない。

 国の対応が進まない中、独自に患者の支援に乗り出す自治体も出ている。患者の家族らでつくる「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」(東京)によると、横浜市や東京都武蔵野市、同杉並区、茨城県牛久市、北海道恵庭市、同美唄市が医療費の自己負担分助成などの支援制度を設けている。同会の松藤美香代表は「国の勧めで接種したのに健康被害が救済されないのはおかしい。全国統一的な救済策を打ち出すべきだ」と訴えている。同会=042(594)1337。


=2015/06/20付 西日本新聞朝刊=

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