<18>ドライバーに愛される味 丸星ラーメン店(福岡県久留米市)

西日本新聞

 福岡県久留米市の郊外、筑後川近くの国道3号沿いに立地する「丸星ラーメン店」。トラックや乗用車がひっきりなしに行き交う外の様子を見ながら、同店の高橋和子さん(68)は「オープン当時は20分に1台くらいしか通りませんでしたよ」と懐かしむ。1958年に開業した同店は、ドライブイン型飲食店の先駆けでもある。

 創業したのは和子さんの父、星野吾三郎さん(故人)。戦後、久留米市内で八百屋やうどん店を営んでいたが、車社会を見越してか、国道沿いの土地を取得した。最初に売ったのは焼き芋。ある時客のトラック運転手からこう言われた。

 「ラーメンば出して」

 星野さんは久留米の知り合いからラーメンを習い「丸星中華そばセンター」を開店する。広さはたった2坪。昼夜関係なく働くドライバーのために24時間営業にした。丸は「昼の太陽」で、星は「夜」。店名には昼も夜も開いているという意味を込めた。

 目の前の国道は九州の大動脈。ほどなくして交通量は激増し、店も大繁盛する。和子さんが開店4年後の店の様子を記した、当時の新聞記事を見せてくれた。店の前に列をつくるトラックの写真。記事は〈最近となりの畑を埋め立てて無料駐車場をつくった〉と伝えている。以来、駐車場を度々拡張。カウンターだけだった店内も増築を重ね、今では100人ほどが入れる。一日最高4200杯売った。

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 夫の勉さん(69)と一緒に和子さんが切り盛りする店の雰囲気は昭和の風情、懐かしさが漂う。店内に入ると左手にはダシが染みわたったおでん。右手の厨房(ちゅうぼう)をのぞくと大きな羽釜があった。中には大量の豚骨がグツグツと煮立っていた。「創業以来、空にしたことはありませんよ」と和子さん。店内を動き回るのは、30年以上のキャリアを持つ人もいるという“おばちゃん”たち。チェーン店のようなマニュアル的対応ではない温かさがある。

 ドライバーの胃袋を満たしてきた一杯。茶褐色のスープが食欲をそそる。口に含むとストレートな豚骨のダシが広がる。太めの麺とスープを一気にすするとその香りが鼻を抜けた。素朴だが、これぞ豚骨という味わいだ。

 和子さんは父親を「奉仕の人」と評する。戦後は、戦争孤児にご飯を食べさせ、就職も世話した。ドライバーへの感謝の気持ちもあったのだろう。開業後は、隣接地にドライバーのための無料宿泊所を一時期開設したという逸話も残る。店を出る際、壁に掲げられた「丸星小唄」なるものが目に入った。星野さんが歌詞を付けたという歌はこう締めくくられていた。

 ♪交通安全祈ります 丸星小唄で祈ります

(小川祥平)

=2015/07/02付 西日本新聞朝刊=

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