<20>ロボットの歌姫【ヨハネスブルグの天使たち】

西日本新聞

 星新一「ボッコちゃん」、椎名誠『アド・バード』と、ロボットSFの変遷を見てきたわけですが、じゃあ、いまの日本SFにおけるロボットはどうなっているのか?

 その答えのひとつが、宮内悠介(1979年生まれ)の第2作『ヨハネスブルグの天使たち』(2013年、早川書房)。前年に出たデビュー単行本『盤上の夜』(創元SF文庫)が日本SF大賞を受賞したのに続いて、こちらも同賞特別賞を受賞。連続して直木賞候補にも選ばれた。

 本書は全5話から成る近未来SF連作集。“歌姫”と呼ばれる少女型の日本製ホビーロボットDX9が軸となる。歌を歌わせることのできる電子楽器というか、初音ミクみたいなボーカロイド(音声合成ソフト)にボディを与えたような存在ですね。

 表題作の舞台は、南アフリカのヨハネスブルグにそそり立つ円筒形の超高層ビル(今年公開されたニール・ブロムカンプ監督のロボット映画「チャッピー」にも登場する実在の建築、ポンテ・タワーがモデル)。老朽化と不法占拠で半ばスラム化したこのビルを日本企業が買い取り、DX9の試作品の落下試験を行っていた。300回の耐久試験をクリアすれば量産体制に入るはずが、内戦の勃発(ぼっぱつ)により、日本企業の社員たちは命からがら国外に脱出。その結果、残された2700体のロボットは、いまも毎日、高層ビルの吹き抜けを中庭に向かって落ちつづけ、ビルの住人は、それを“夕立”と呼んでいる。

 廃墟となりつつある高さ173メートルの高層ビルから果てしなく落下する歌姫たち。そのうちの1体に意識らしきものが芽生え、SOSを発したところから、ロボット救出作戦がスタートする……。

 続く「ロワーサイドの幽霊たち」は、DX9を使って9・11同時多発テロを再現しようとする突拍子もないプロジェクトの話。以下、アフガン、イエメン、北東京を舞台に、DX9をめぐる思いがけないドラマがつながってゆく。オタク的アイテムを使ってグローバルな状況を浮かび上がらせる、最先端の日本SFだ。

(書評家、翻訳家)

=2015/07/02付 西日本新聞朝刊=

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