<21>ヒトと機械の未来【アイの物語】

西日本新聞

 日本は世界に冠たるロボットSF大国なんですが、主力は小説じゃなくてアニメ。「マジンガーZ」の昔から、「機動戦士ガンダム」「新世紀エヴァンゲリオン」「機動警察パトレイバー」などなど、さまざまなタイプの巨大ロボットものが人気を博してきた。一方、「鉄腕アトム」系の等身大ロボットでは、この15年ばかり、(サイボーグや擬人化を含む)戦闘美少女ものの人気を背景に、少女型アンドロイド(ガイノイド)が主流になっている。

 そうしたロボットたちが世界を支配する未来を肯定的に描いた小説が、山本弘『アイの物語』(2006年初刊、現在は角川文庫)。ブラッドベリ『火星年代記』のように、過去に発表した同一テーマ(ロボットもの)の短編を集めた連作集だが、外枠となる設定と書き下ろしの2編を加え、オールタイムベスト級のロボットSF長編としてまとめあげる。

 人類文明が衰退し、マシンが繁栄する遠い未来。古い物語を収集する語り部の“僕”は、食糧を盗んで逃げる途中、美少女型の戦闘用アンドロイドに捕獲される。彼女が病室の“僕”に毎日読み聞かせる物語。それは、ヒトとマシンの関係を“私”が語る、七つの短編小説だった……。

 この寓話(ぐうわ)的な枠組みの中に、ネット上のリレー小説を扱った現代ものや、ブラックホール観測基地のAIが語り手となる本格SFがとりこまれる。最初のうちは、個々の短編がばらばらに見えるが、書き下ろしのラスト2編で、すべてのエピソードがきれいにつながる。老人介護用自律アンドロイドの実地運用テストをめぐる「詩音が来た日」は、人間とは違う種類の知性をリアルに描きながら、心を揺さぶる“泣ける小説”を実現。巻末の「アイの物語」が、ヒトと機械をめぐる長いドラマに鮮やかな決着をつける。

 描かれるモチーフはものすごくオタクっぽいのに、オタク的な素養のない一般読者まで物語に引き込んで感動させる力がある。“人類が機械に支配される世界”という未来像は映画「ターミネーター」と同じなのに、正反対の結論が導かれるのも面白い。

(書評家、翻訳家)

=2015/07/03付 西日本新聞朝刊=

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