多様な生き方 選べる社会に 「男がつらいよ」 武蔵大助教・田中俊之さん 男性学の本を出版

西日本新聞

「男性学が『男らしさ』に折り合いをつけるための思考の補助線になればうれしい」と話す田中俊之さん 拡大

「男性学が『男らしさ』に折り合いをつけるための思考の補助線になればうれしい」と話す田中俊之さん

 ■新訳男女 語り合おう■ 
 弱音を吐けない、イクメンに掛かる過剰な負担、解決しない長時間労働…。こうした男性が抱える問題を「男性学」の視点から優しく解説した本を、武蔵大社会学部助教の田中俊之さん(39)が出版した。タイトルは「男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学」(KADOKAWA、1080円)。なぜ今「男がつらい」のか。聞いてみた。

 -そもそも男性学とは。 「男性特有の問題を対象とした学問です。例えば女性は結婚や出産をきっかけに仕事を続けるか考える人もいる。これは女性だからこそ抱える『女性問題』。一方、男性は結婚や子どもの誕生で仕事を辞められないというプレッシャーを感じる。これが男性が男性だからこそ抱える『男性問題』です。男性学の目標は二つ。男女平等の達成と、性別にとらわれない多様な生き方の実現です」

 -なぜ今「男がつらい」のですか。

 「製造業など従来男性が多い産業の就業者数が大きく減少し、給与も下がっていて『男性は働いて家族を支える』というこれまでの社会のルールが立ち行かなくなっている。そうしたルールや『男とは』というイメージと、現実の変化にギャップが生まれ、生きづらさを感じる男性が多くなっている。その問いに答えられるのが男性学なのかなと思います」

 -本では、男性は子どものころから競争を強いられているとあります。

 「社会のルールとして、男の子は競争して勝利することを期待されている。でも私も男性だから思いますが、結局どこかで必ず負ける。就職がうまくいっても出世レースで負けたり。競争で負けるとコンプレックスになり、生きづらさの原因になります」

 -なぜ、男性は弱音を吐きづらいのですか。

 「社会全体が男性が弱音を吐くことを禁じているところがあります。男性の考え方の傾向として、人に相談しても悩みは解決しないという理由もある。社会の仕組みも、男性が情けない理由で何かを放り出せないようになっています。例えば住宅ローンは、父親の肩にかかっている。正社員の共働きの家庭でも一般的に女性の方が賃金が低いので主は男性にならざるを得ない。男性はドロップアウトできないし、女性はバリバリ働きたくても働けない。男女ともに不自由を強いられています」

 -イクメンが抱える過剰な負担も指摘しています。

 「男性がもっと家事や育児をした方がいいという議論は往々にして長時間労働の問題を抜きにして語られている。長時間労働が改善されずに育児も担うのは荷が重すぎる。両方をセットで考えないといけません」

 -一番伝えたいことは。

 「男性の生き方がワンパターンしかなく、選べないのはおかしいということ。社会構造を変えるのは難しいけど、気を楽にすることはできる。男性自身が『男らしさ』と折り合いをつけることで、もっと気楽に生きられると思う」

 「男性には、まずは落ち着いてと伝えたい。いったん立ち止まって自分のこれまでや今後の働き方、生き方を見つめ直してほしい。例えば自分が上司になったらせめて自分の部署は男性でも育児休業を取れるようにしたり、定時で帰すことを基本にしたり。資格を取って仕事の幅を広げてもいい。次世代に向けて自分のできることや、どう生きたいかを考えてほしい」


=2015/07/04付 西日本新聞朝刊=

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