【発達障害 どう向き合う】告知 成長に合わせて 否定的な要素控えめに

西日本新聞

長男(10)の発達障害の検査結果報告書を見ながら、告知について悩む母親(40) 拡大

長男(10)の発達障害の検査結果報告書を見ながら、告知について悩む母親(40)

 外見からは分かりにくいが、コミュニケーションなどが苦手で社会生活に困難を抱える発達障害。障害の早期発見をうたう「発達障害者支援法」施行から10年。幼いうちに障害が分かる子どもが増えるのに伴い、障害があることを本人や周囲にいつ、どう伝えるか、悩む親も増えている。発達障害の告知について考えた。

 福岡県内の小学4年男児(10)は小1の夏、担任の指摘から「アスペルガー症候群の傾向がある」と分かった。母親(40)は専門医や療育相談などを訪れ、夫婦で発達障害について学んだ。厳しく叱るのをやめ、分かりやすく指示するなど、接し方を変えた。学校の理解や支援もあり、今のところ通常学級で問題なく過ごしている。

 発達障害については学校、習い事の指導者以外、本人はもちろん、2人の弟や祖父母にも明かしていない。最近、男児が「何で僕はできないん?」などと聞くようになった。男児が発達障害だと分かったとき、落ち込んだという母親は「そろそろ本人に伝えるべきなのか。どう話せば前向きに受け止めてくれるだろうか」と考え込む。

 発達障害の子どもを持つ親でつくる「福岡市自閉症協会高機能自閉症アスペルガー症候群部会・タンポポ」の荒木祐子さん(46)は「親が障害を真に理解して受け入れ、本人の長所を見いだす目を持っていることが必須条件」と助言する。

 同会に所属する母親(51)は、高機能自閉症の長男(18)=高校3年=が小5の春休みに告知した。9歳での診断後、友人関係などに苦労する姿を見て時期が来たと判断した。

 支援を受けていた主治医や臨床心理士、通級指導教室の教員ら4人と相談しながら、本人の特性を分かりやすく示す本を手作りした。「ポジティブな面を強調し、ネガティブな要素は控えめに」という医師の助言を踏まえ「得意なこと、苦手なこと」「困ったときのお助け情報」などを具体的に挙げた。小学校の教師や親族にも事前に見せて協力を仰いだ。

 「本人を取り巻く支援者の立場を整理し、いつでも助けてくれる存在がいることを一番伝えたかった」と母親。長男は告知後、安心した様子だったという。

 「告知は本人が自分の特性を知って、生きやすい工夫をするために必要。一生を通じたサポートのスタートでもある」。九州大病院子どものこころの診療部の山下洋特任講師(児童精神医学)は、段階を踏んだ告知を勧める。

 (1)小学校入学時(2)自己意識や自尊心が育まれる小学校高学年(3)進学や就職など社会的な現実の壁が見えてくる中高校生-と、成長の節目に本人の困り事や疑問に合わせて繰り返し丁寧に伝えていく。「告知そのものよりも、内容を準備する段階で保護者、教育や福祉の支援者など周囲が理解を深め、支援態勢を整える過程が大事だ」と強調する。

 福岡市発達障がい者支援センター(ゆうゆうセンター)の緒方よしみ前所長(60)は「自らの特性を前向きに理解させるため、学校や家庭でのトラブルなどで追い詰められてのネガティブな告知だけは避けたい」と指摘。「本人の特性や環境によって告知の方法もタイミングも異なり、ケース・バイ・ケース。見極めは難しいので、保護者は1人で悩まず専門機関に相談してほしい」と呼び掛けている。

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 発達障害がある人たちの就労について考えた連載「発達障害 働くために」(4月23日から本紙紙面に全4回掲載)に、読者から「発達障害だと分かった子どもの学校生活や対人関係など『働く前』についての情報も欲しい」という声が寄せられました。発達障害がある子どもたちにどう向き合ったらいいのか。育ちをめぐる悩みや課題を紙面で一緒に考えていきます。


=2015/07/09付 西日本新聞朝刊=

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