管理組合 役割どこまで? マンション規約 国がコミュニティ事項削除方針 自治会費強制など是正狙い

西日本新聞

日商岩井福陵マンションで毎年開かれる夏祭り=2013年8月 拡大

日商岩井福陵マンションで毎年開かれる夏祭り=2013年8月

 ●団体「連携形成に必要」 
 マンション管理組合による「自治」が岐路に立っている。全国の管理組合が運営のモデルとしている国の「マンション標準管理規約」から、国は「コミュニティ事項」を削除し、管理組合の業務を建物、敷地内の管理に限定する改定案を打ち出しているためだ。生活音や悪臭など近隣住民とのトラブル調整も担ってきた管理組合の役割は、どこへ向かうのか。

 夏はバーベキュー、秋は敬老会、冬はイルミネーション…。福岡市早良区の日商岩井福陵マンション(106戸)では、1年を通して居住者によるさまざまなイベントが開かれる。絵手紙やフラダンスの愛好グループもあり、マンション内の多目的ホールで練習を重ねる。

 「このマンションに住んでいる人はみんな顔見知りだから。わきあいあいとしてみんな仲良しよー」。管理組合の理事長に就任して9年目の平山満さん(77)の声もまた明るい。

 鉄筋7階建て築39年。6年前、約1億円かけて大規模改修工事を終えた際、平山さんは思った。「1年半近く工事が続き、騒音や振動を我慢してきた。真新しくなったマンションをみんなで祝いたい」。会費制で食材やバーベキューセットなどを持ち寄った夏祭りを始めた。顔見知りになると自然に交流の輪が広がっていった。

 「それまではエレベーターで一緒になっても知らん顔だった住人たちが、今ではあいさつするようになった。ごみ出しや駐輪場のマナーも格段によくなった。日頃から触れ合うことでトラブルも少なくなり、マンションの雰囲気が明るくなった」。平山さんは管理組合の運営で、住人の間のコミュニケーションの大切さを実感する。

 § § 

 日商岩井福陵マンションの取り組みは、住人同士の良好なコミュニケーションがマンション運営を円滑にする好例といえる。

 こうした「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」(標準管理規約32条15号)を、国土交通省は削除しようとしている。

 標準管理規約には法的な拘束力はないが、この「コミュニティ事項」があるため、住人や近隣住民との関係を良くすることが、管理組合の役割として広く認識されてきた。

 改定の背景には、マンション法に基づく強制加入団体である管理組合の管理費の中から、任意加入団体の自治会(町内会)費を支出していることや、自治会からの退会を希望している組合員からも強制的に自治会費を徴収していることについて「共有財産の管理という管理組合の目的外支出で違法」としたり、「任意加入の自治会からの退会は有効で支払い義務はない」としたりする司法判断が出ていることがある。

 国交省マンション政策室は「管理組合は建物と敷地を適正に管理すればよい。コミュニティーの形成を拡大解釈してトラブルが起きている。マンションの管理と自治会活動の定義や範囲を整理したい」という。

 日商岩井福陵マンションの管理組合では「荒江3丁目町内会」に加入。組合員(オーナー)から月平均8千円徴収する管理費の中から年間約30万円の町内会費を支払っているが、「組合員からの苦情は一度もない」(平山理事長)。マンション敷地内の樹木の葉が隣近所に舞うなど迷惑を掛けてしまう際も、地域とコミュニケーションを取っていれば善処できるという。

 NPO法人福岡マンション管理組合連合会(福岡市)の杉本典夫会長は「良好な住環境を維持するため、住人同士や地域とのコミュニケーションは大切。“マンションの憲法”といえる標準規約からコミュニティ条項を削除することは納得できない」と懸念する。


=2015/07/11付 西日本新聞朝刊=

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